読書

白井聡「民主主義は不可能か――シュミット、フロイト、ラディカル・デモクラシー」『RATIO』04号、2007年。

別冊「本」RATIO 04 (別冊「本」)

別冊「本」RATIO 04 (別冊「本」)

 「情熱」の問題は重要だが、しかし、「不可知なもの」の強調がなぜ「自由民主主義への情熱」と結びつくと言えるのか、僕には、よくわからない気がした。「不可知」を強調することが民主主義への失望、虚偽、冷笑などに結びつくことはない、と言い得るのだろうか。また、レーニンの言葉が、それほど新しいものであるのかどうかも、よくわからない。一般にマルクス主義は、資本主義の崩壊について厳密に科学的な分析=確信に基づいて予想し、かつ、来たるべき共産主義については多くを語ってこなかったのではないだろうか。
 むしろ、著者の議論からは、民主主義における、(水平的ではなく)垂直的なコミュニケーションを主導する政治的リーダーの必要性ないし不可避性、というメッセージを受け取るべきではないかと思うのだが、どうだろうか。