論文を書くこと

昨日、ある院生と話をしていた時に、ふと「論文を書くというのは、ジクソーパズルを作るのに似ていると思う」という表現が口をついた。でも、少なくとも自分の場合は、確かにそうです。
 ジクソーパズルというのは、最初に箱を開けたときには、あまりのピースの多さに、「これがちゃんと組みあがるのだろうか」と思うと呆然としてやる気が削がれてしまいます。それでも、何とか踏ん張り、少しずつできるところを組み合わせる作業を続けていくと、ある段階から、急に全体が見渡せたような気分になります。すると、今度は、「早く完成させたい」と強く願うようになり、俄然やる気も出てきて、作業もはかどります。そして、完成・・・ほら、論文を書くのとよく似ていませんか?
 もちろん、違うところもあります。最大の違いは、パズルの場合はどんなに絶望的に見えても、最初からピースはちゃんと揃っていて、組み合わせさえきちんとできれば必ず完成するのに対して、論文の場合は、手持ちのあれこれの材料・ネタを組み合わせても必ず完成するという保証はないことでしょう。
 ただ、僕はいつのころからか、こう思うようにしています。自分が思いついたことや気になって書きとめたことは、最初はどんなに繋がっていなくても、その多くは考えを進めて整理されていけば、必ず一本の線で繋がるのだと。これは、あくまで「心がけ」の問題にすぎませんし、僕のフィールドが主には思想系だからいえることかもしれません。でも、そういうつもりで取り組むと確かにそれなりに筋が通ってくるものです。だから、僕は、断片でもなんでもできるだけ文字を打ち込んでおくことにしています。後で必ず一本の線で繋がる、と信じて。