読書

肝心なことをやらずに・・・というわけでは決してないんですよ。いや、ホントですってば。

現代思想2008年9月号 特集=大学の困難

現代思想2008年9月号 特集=大学の困難

というわけで(?)、あくまでも合間に(力説)、読んでいるのですが、なかでも竹内淳「日本の研究教育力の未来のために」が面白かったです。
 いろいろな指摘がされているのですが、大きな指摘は、日本の研究費配分の少数の人・期間への重点的配分方式と比べて、アメリカの場合はもっと広く均等に配分されている、だから、少数の「世界一線級」(著者によればこれはすでに達成されている)の大学への重点配分よりも、それ以外のところにも最も配分するほうがよい、ということです。
 考えてみると、スポーツ界などでも「裾野を広く」戦略が大切、とはよく言われてきましたね。サッカーとかでもそうだし。分厚い層の中から、突出した才能も出てくるという話です。(日本の)大学の場合は、それとは逆のことをやっているのではないか、ということです。
 あとは、女性へのポジティブアクションも、「未来への投資戦略」であり、「一つのポストを争うことによって生じる『現在だけをみた逆差別論』に扇動されないように」と言い切っている点もすごい。
 全体的に、よい意味での理系研究者の特徴がよく表れているような気がしました。いや、「よい意味での理系研究者の特徴」というのは、うまく言えないのですが、データをベースに議論することと、理念を語ることとが、両方備わっている、ということになるでしょうか。僕も職場での仕事柄、そういうタイプの理系の研究者を何人か見てきたつもりでして、「文系だとなかなかこうはいかないよね」と思うことが多かったのでした。