読書

 ご恵投いただいた『入門政治経済学方法論』より、第0章「政治経済学方法論のために」、第5章「事例研究」のあたりを読む。

入門 政治経済学方法論

入門 政治経済学方法論

 両章とも、僕の曖昧模糊とした授業での説明の改善に大いに役立ちそう。
 とくに第0章は、面白く勉強になった。また、女性の先生と女性のTAというキャストの対話形式もなかなかよい。これが、いちいち「なかなかよい」と言う必要がない状態にならないといけないな。うむ。
 第5章も、KKVの方法論の明快な解説*1と、非KKV的な事例研究の方法論の紹介で勉強になる。 違いは、やはりKKVが量的研究に準じて質的研究の方法論を提唱しているのに対して、非KKVの人たちは質的研究独自の方法論を提案しようとしていることだろう。このあたりが、「因果効果」と「因果的メカニズム」との区別、どちらを重視するか、というところに表れている。個人的には、量的研究に準じた方法論に依拠する限り、質的研究はどこまでいっても「次善の策」の地位に止まってしまうのではないか(もっといえば、計量ができない人が「科学的な」分析をやっているに過ぎないということになってしまうのではないか)という気がする。非KKV的な方法論についての活発な議論を期待したい…という第三者的な言い方もアレだけれども。
 ところで、「因果効果」というのは「相関」と違うのかなあと前から思っていたのだけど、どうなんだろうか…などと言っているあたり、やっぱりわかっていないということか。

*1:もっとも、その途中で書かれる「啓蒙主義政治学」のタームが「科学的」なのかどうかとは思う。この表現は今ではおなじみになっているけれども、表現自体があまり厳密なものとは思われない。なされている指摘の主な部分は,全く妥当であるかどうかは議論の余地があるとしても(恐らくそれは「方法」の理解の仕方に関わる。)、「科学的方法」の観点からのものなのだから、もう少しタームを選んだほうがよかったのではないか。また、そもそも、「科学」と「啓蒙」が相反するとは、理系の研究者はあまり考えないのではないだろうか。まあ、「科学」が「啓蒙」に資するというのは、とてもモダン的な考え方だけれども。