「里帰り出産」という慣習について

 「お産、どこですれば…:地域の中核病院から消える産婦人科」(朝日新聞・名古屋版、2005年7月17日朝刊)という記事がありました。
 内容は、産婦人科医師不足で、出産を*1実家のある病院で希望する「里帰り出産」を制限する病院が出てきている、という話。
 特定の領域*2で医者志望者が減少していることの問題性はもちろんあります。
 ただ、これを「女性が産みたいところで子供を産めないのは悲劇です」(記事中にあった某NPO法人関係者の言葉)というのは、どうだろうか?
 つまり、「夫がいるにもかかわらず、なぜ女性は実家で出産しようと思うのか?(しかも、しばしば数ヶ月戻ってこない)」ということです。
 もちろん、この理由は、恐らく、母親が十全なサポートをしてくれるということが大きな理由だと思います。しかし、これは、言い換えると、「夫はサポートをしてくれない/できない」ということが前提での判断ということです。これは、しかし、「出産に関して、夫は頼りにならない」と言っている/言われているようなものです。
 僕は、「夫が出産にあたって妻をサポートすることをしない/できない」状況がなかなな改善されていないことが、大変問題であると思います。
 場合によっては初めての遭遇かもしれない小さな子どもと恐る恐るながらも接する機会を得ることで、男性も父親になることができるのです。小さい赤ちゃんと向き合うのは、女性にとっても大変なことでしょうけれども、当然男性にとっても楽しくも大変なことです。でも、そういった経験・場数を踏むことで、「親らしさ」が養われてゆくし、妻の子育てへの愛憎半ばする感覚も少しは理解できるというものです。
 要するに、「里帰り出産」については、産婦人科医の減少は問題の一面であり*3、もう一つ、父親・男性が出産・育児に十分にかかわることのできない労働状況をも問題にしてゆかなければならないと思うのです。
 出産前後の男性の休業制度の活用の推進が少なくとも不可欠です。これだけでもいろいろとハードルが高いのが現状ですが、さらに、他にもこんなことはどうでしょうか。記事によると、「東京都の主婦(29)は8月中旬が出産予定日。今春、夫の転勤で名古屋から越してきた(以下略)」とあります。この方、名古屋にいる時から、出産は実家のある岐阜で、と決めていたらしいのですが、それはともかく、8月出産なのに4月に全く当然のごとく転勤が命じられることからして、いかがなものなのでしょうか?ただでさえ、初めての出産で不安いっぱいなのに、出産間近で誰も知り合いのいない*4東京へ引っ越す…。こんなことが何度も繰り返されると…。
 そりゃ、子どもも増えないだろうなあ、と思うのは僕だけでしょうか。





 

*1:妊娠中の検診は自分の居住地の病院で受けている。

*2:小児科希望者も少ないらしいですね。

*3:瑣末な問題だと述べているのではありません。念のため。

*4:というのは、推測ですけど。