「30代の危機」

昨日の午後は、通称「名古屋『政治と社会』」研究会でした。
せっかく集まっているのだから、何かカタチになるものを作ろう、という話。
 その場で、何人かの人が話題に出したのが、「30代の危機」という話。『書斎の窓』でかつて村松岐夫先生が連載していた「政治学の窓から――若い学徒へのアドバイス(目次はこちら)という文章の中で、書かれていたことです。
 原文が手元にあるわけではないので、研究会での話の中で出ていたこと、ということになりますが、要は、博論を完成させるなどして30代になったときに、どのように研究生活を過ごすかがとても重要、ということです。
 例えば、博士論文をあるテーマで書くと、そのテーマの専門家としてあちこちから声がかかるようになる。で、それを引き受けているうちに、次のテーマへと変わっていくタイミングを逸する、とか。
 我が身を振り返ってみると、博論のテーマからはむしろスムーズに移行することができている*1とはいえ、いろいろな仕事を受けすぎて、常に「いまここ」の作業に追われてしまい、長期的な構想を見失っている(で、40代に危機に陥る)、と言えるかもしれません。
 研究会で同席したHさんにも、「もう少し仕事を絞ってもいいんじゃないか」と言われました。
 仕事は実は何でも引き受けているわけではなくて、この間、いくつかお断りさせていただいたものもあります。とはいえ、自らにとってチャレンジングと思えるお誘いには、Noと言いがたい魅力が潜んでいることも確かです。やはり優れた研究者と一緒に仕事をすることは、とても得ることが多いからです。それを跳ね除けて、ひたすら「我が道」を進むことは、とても難しいし、それが望ましいことなのかどうかについても、今の僕には判断ができません。
 幸い、自分の仕事を振り返ってみると、「フェミニズムと政治理論」に関する文章は、あまり重複しない形でかなりの分量ができており、本としてまとめることは十分に可能な状態になっていると思います。もう一つ、現代民主主義論についても、分量的には、本一冊分は優にあります。ただ、こちらは、まとめるとなるとかなり手持ちの諸論文をいじらないといけないような気がして、結局、手をつけられないままで今に至っています。
 結局、自分は自分の信じる道を進むしかない、のでしょうね。

*1:それはそれで、問題だ、という声もあるかもしれませんが。