ベーシック・インカムにまつわる身の上話

 今期の最後の授業が終わりました。ベーシック・インカムの話でしたが、受講生の皆さんはどう思ったのでしょうね?
 思い起こせば、ベーシック・インカムに出会ったのは、マスターの大学院生のころ、クラウス・オッフェの学説研究を始める、とは言ったものの、何をどう研究すればよいのか、全くわからないままにオッフェの論文など読んでいたころでした。「へー、こんな考え方があるのか」と思い、そこら辺のことを書きたい、と思うようになれました。でも、修論の主たるテーマではなかった上に、原稿執筆が全然間に合わず、かつ当時は日本ではほとんど注目されていなかった(と思うのですが、単なる不勉強かも・・・)ので、結局、修論ではほとんどかけませんでした。ついでにいうと、博論そして博論を少しリライトして出した拙著『国家・政治・市民社会:クラウス・オッフェの政治理論』(青木書店、2002年)でも、少しは出てくるのですがそれほどまともには取り組むことができませんでした(って、宣伝しちゃいましたね。でも高い本なんですね、これが)。アイデアは面白くとても共感できるのですが、自分の論文の中にどうやって盛り込めばよいのか、とりわけ単なる紹介ではない形でどうやって盛り込めばいいのか、ということがなかなかわからなかったのだと思います。拙著を読んでいただくと、単なる紹介ではない形でベーシック・インカムを登場させるのに苦労した跡が読み取っていただけると思います、というか読み取れなくても無理やりそういうつもりで読んで下さい。
 ようやく、昨秋に発表した「熟議民主主義とベーシック・インカム福祉国家『以後』における『公共性』という観点から」(『早稲田政治経済学雑誌』第357号、2004年)という論文で、ある程度正面からベーシック・インカムを取り扱うことができました。不勉強がみえみえの文章であるとはいえ、自分としては初めてベーシック・インカムを扱うことができた、という限りにおいて、それなりにうれしくも思っています。
 話題は変わり、昨日の学部ゼミでとあるゼミ生に紹介してもらった、谷岡一郎『「社会調査」のウソ』(文春新書、2000年)を購入。割と有名になった本だと思うのですが、未読でした。自分自身、メソドロジーについての理解が全く足らず、きちんと勉強しなくてはいけないなあ、と前々から思っているところです。大学院のゼミでも、そういうことをきっちりやったほうがいいかなあ、などともぼんやり考え中です。