11月に、加藤哲理さんとの共編で『ハーバーマスを読む』(ナカニシヤ出版、2020年)を刊行しました。前半(第1部)はハーバーマスの思想における重要トピックを、後半(第2部)はハーバーマスが向き合った諸思想との関係を、それぞれ論じています。トピックも寄稿者も、「ハーバーマスならば、これ(この人)」というもの(人)から、やや意外に思われるもの(人)まで、多彩になっていると思います。目次は、下記をご覧ください。
http://www.nakanishiya.co.jp/book/b544314.html
翻訳書『正義と差異の政治』刊行
この度、飯田文雄先生、苅田真司先生、河村真実さん、山田祥子さんとの共訳で、アイリス・マリオン・ヤング『正義と差異の政治』(法政大学出版局、2020年)を刊行しました。原著は、1989年に刊行された、Iris Marion Young, Justice and the Politics of Difference, Princeton University Press です。この本、『正義と差異の政治』は、特に1970年代以降に主流となった現代のリベラリズム・正義論が、文化やジェンダーなどの「差異」の問題の考慮において不十分であることを鋭く指摘した著作として、政治理論・政治哲学における「現代の古典」と言ってもよい地位を占める著作だと思います。翻訳プロジェクトが始まってから、かなりの時間が経ってしまいましたが、何とかこの重要な本の翻訳を刊行できたことを、喜びたいと思っています。
- 作者:ヤング,アイリス・マリオン
- 発売日: 2020/09/28
- メディア: 単行本
Justice and the Politics of Difference
- 作者:Young, Iris Marion
- 発売日: 2011/08/22
- メディア: ペーパーバック
- 作者:アイリス・マリオン・ヤング
- 発売日: 2014/06/26
- メディア: 単行本
- 作者:スーザン・M.オーキン
- 発売日: 2013/05/31
- メディア: 単行本
秩序を乱す女たち?: 政治理論とフェミニズム (サピエンティア)
- 作者:キャロル ペイトマン
- 発売日: 2014/07/03
- メディア: 単行本
- 作者:キャロル・ペイトマン
- 発売日: 2017/03/29
- メディア: 単行本
頂きもの
前回に続いて、頂いた本のご紹介です。
1)五野井郁夫さんから、『現代用語の基礎知識2021』(自由国民社、2020年)を頂いておりました。どうもありがとうございました。ご紹介が遅れて失礼しました。
五野井さんは、「長期政権の実現とあっけない終焉」、「菅政権下で続くコロナ禍と安倍政治」などを執筆されています。
- 作者:長野 晃
- 発売日: 2021/01/23
- メディア: 単行本
3)山岡龍一先生と岡﨑晴輝さんから、『改訂版 市民自治の知識と実践』(放送大学教育振興会、2021年)を頂きました。どうもありがとうございます。(改訂版の書誌情報は、まだ出ていないようです。)
頂きもの
この間のいくつかの頂きものについてご紹介します。
1)井上弘貴さんから、『アメリカ保守主義の思想史』青土社、2020年、を頂いておりました。ありがとうございます。また、ご紹介が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
- 作者:弘貴, 井上
- 発売日: 2020/11/05
- メディア: 単行本
- 作者:ヘレン・M・ガンター
- 発売日: 2021/01/08
- メディア: 単行本
3)訳者のみなさまからということで、クルト・ドゥブーフ著、臼井陽一郎監訳、小松崎利明・武田健・松尾秀哉訳『トライバル化する世界――集合的トラウマがもたらす戦争の危機』(明石書店、2020年)を頂きました。どうもありがとうございます。
- 作者:クルト・ドゥブーフ
- 発売日: 2020/12/26
- メディア: 単行本
年金制度の不人気改革はなぜ実現したのか:1980〜2016年改革のプロセス分析 (MINERVA人文・社会科学叢書 246)
- 作者:鎮目真人
- 発売日: 2021/01/26
- メディア: 単行本
武器としての政治思想: リベラル・左派ポピュリズム・公正なグローバリズム
- 作者:赤亥, 大井
- 発売日: 2020/12/19
- メディア: 単行本
時政学への挑戦:政治研究の時間論的転回 (MINERVA人文・社会科学叢書 246)
- 発売日: 2021/01/26
- メディア: 単行本
頂きもの
編者の一人の堀江孝司さんから、HORIE Takashi, TANAKA Hikaru, and TANNO Kiyoto (eds.) Amorphous Dissent: Post-Fukushima Social Movements in Japan, Trans Pacific Press, 2020, を頂いておりました。どうもありがとうございます。英語での書籍刊行、素晴らしいと思います。
Amorphous Dissent: Post-fukushima Social Movements in Japan
- 作者:Kinoshita, Chigaya,Tanaka, Hikaru,Horie, Takashi,Tanno, Kiyoto,Kato, Tetsuro
- 発売日: 2021/01/20
- メディア: ペーパーバック
頂きもの
この間に頂いたものの一部です。
1)訳者の横田正顕先生から、ファン・リンス『民主体制の崩壊――危機・崩壊・再均衡』(岩波文庫、2020年)を頂きました。どうもありがとうございます。民主化研究の古典的重要文献の新訳です。
- 作者:リンス,フアン
- 発売日: 2020/11/17
- メディア: 文庫
2)著者の一人の山下順子さんから、相馬直子・山下順子『ひとりでやらない育児・介護のダブルケア』(ポプラ新書、2020年)を頂きました。どうもありがとうございます。「ダブルケア」概念を広めたお二人の、一般向けの本です。
3)梅澤佑介さんから、『市民の義務としての〈反乱〉――イギリス政治思想史におけるシティズンシップ論の系譜』(慶應義塾大学出版会、2020年)を頂いておりました。どうもありがとうございます。グリーン、ボザンケ、ホブハウス、そしてラスキへと展開します。
市民の義務としての〈反乱〉:イギリス政治思想史におけるシティズンシップ論の系譜
- 作者:梅澤 佑介
- 発売日: 2020/05/29
- メディア: 単行本
二〇世紀転換期イギリスの福祉再編: リスペクタビリティと貧困
- 作者:卓, 山本
- 発売日: 2020/12/08
- メディア: 単行本
リベラルとは何か-17世紀の自由主義から現代日本まで (中公新書)
- 作者:田中 拓道
- 発売日: 2020/12/21
- メディア: 新書
- 作者:空井 護
- 発売日: 2020/12/21
- メディア: 新書
論文刊行
この度、熟議民主主義に関する学術雑誌 Journal of Deliberative Democracy, Vol. 16, No. 2, 2020 に、拙稿 'Another Way for Deepening Democracy without Shortcuts' が掲載されました。Journal of Deliberative Democracy は、以前は Journal of Public Deliberation という名称で、今年から(第16巻から)雑誌の名称を変えています。本号は、2019年末に刊行された Cristina Lafont, Democracy without Shortcuts (Oxford University Press) をめぐる誌上シンポジウムとして企画されています。
リンク先を見ていただくとわかりますが、寄稿者は、熟議民主主義研究の錚々たるメンバーです。Jane Mansbridge, Robert Goodin, James Fishkin, Andre Bachtiger, Simone Chambers, Mark E. Warren などが名前を連ねています。冒頭に、Jurgen Habermas による「コメンタリー」も掲載され、著者のLafontによるリプライもあります。私の論文は短いものですが、こうしたメンバーに混じって拙稿を掲載してもらえたことは、 私にとって大変光栄かつうれしいことです(なお、特集ですので、依頼を受けた上で査読を経ています)。下記のリンク先から、ダウンロードできます(他の論文もできます)。
拙稿は、民主主義の回路を「ショートカット」している諸議論を批判するLafontの基本的な方向性には賛意を示しつつ、「ショートカットなき民主主義」を目指す「もう一つの道」があるのではないか、と問題提起するものです。その際、Lafontが重視するself-government(自己統治)の概念に注目し、これをより多層化・多元化して考えていくべきではないか、という議論を行いました。もちろん(?)、私の持論の家族などの私的領域をも、一つの自立した自己統治の場として捉えていくという話です。単に多層化・多元化というだけではなく、熟議システム論の枠組みを援用することで、家族を「熟議システム」として捉えることを試みました。この話は、拙稿「熟議システムとしての家族」(拙編『日常生活と政治』岩波書店、2019年)でも行っていますが、本稿では「システム」としての家族の境界線をより拡張して理解できることを論じました。
そういうわけで、私としては自分の主に日本語で書いてきた議論を(2014年の英語論文はありますが)、英語でも展開するとともに、少々発展させたつもりです。その意味では、海外の研究者により私の考えを知ってもらえる機会となったと思います。もっとも、他の原稿を読むと自分の原稿と比較して落ち込んでしまいそうなので、まだ読んでいませんけれども(苦笑)。