行き当たりばったりでは

前の単著『政治理論とフェミニズムの間――国家・社会・家族』(昭和堂、2009年)を出してから、早くも2年が過ぎようとしています。
この本の元になった各文章は、それらを書くときに、比較的明確に書き分けることができていました。だから、比較的本にまとめやすかったと言えます。と言っても、もちろん、いざそれをやる時には、多少なりとも苦しんだのですが。
ただ、それから2年経って、では次の単著をどうするのか、と考えた時に、残念なことに、まだ明確なイメージが浮かびません。もちろん、『政治理論とフェミニズムの間』以前にも、それ以後にも、いくつか文章を書いています。しかし、それらをベースにしてどのような本ができるのかということは、あまりマジメに考えてきませんでした。依頼が発端で書いている原稿も多いため、繋がっているトピックをあつかっているようであっても、重複やズレもあります。結局、個々の業績はあっても、それらを全体として見ることが難しくなっています。
しばしば、5年あり10年単位で先を見据えて研究をしなければならない、と言われます。僕も、そのように言われてきました。単著の評価が、(査読つき論文に比べて)どんどん下がってきているように思われる今日この頃ですが、単著を出そうと努力することは、そうした長期的な視野を維持して研究を続けることにつながると思います。どんなに優れた論文を書いても、1本や2本では、本にはならないからです。もちろん、1本、2本の論文を5年、10年かけて書くのだという発想、あるいは、(研究上の困難などで)実際にそうなってしまうことは、あるかもしれませんが。
恐らく次にもし単著が書けるとすれば、福祉(ベーシック・インカム)、民主主義、シティズンシップを結びつけるものになるでしょう。しかし、それを明確なものにするには、まだ時間が必要というか、それをどうまとめるのかについて、もっと真剣に考えなくてはいけません。考えるのを怠ることは簡単です。しかし、そうしている間に、1年や2年はすぐ過ぎてしまいます。他にもやらなければならないことは、たくさんあるからです(研究だけではありませんよ!)。
というわけで、少し危機感を感じて気を引き締めようと思った、5月の最終日でした。