読書

  • 山根純佳『なぜ女性はケア労働をするのか』勁草書房、2010年。

なぜ女性はケア労働をするのか―性別分業の再生産を超えて

なぜ女性はケア労働をするのか―性別分業の再生産を超えて

ストップしていたのを再開して、第4章「家庭における交渉実践と変動」まで読了。
問題関心が重なるところがあって、というか、先日書いた原稿と論点が重なるところがあって、それなりに興味深い。特に、江原由美子氏の「ジェンダー秩序論」に注目しつつ、それを(あえて)言説構造決定論として乗り越えようとする点が興味深い。
物質的基礎と言説的基礎の二元論とでもいうべき理論構成ということだと思うのだが、時と場合によって、あちら(物質)が効いていることもあれば、こちら(言説)が効いていることもある、という具合であって、つまり、両者の連関はそれほど明確に理論化されているわけではないように感じている。同じ物質的なものでも言説的なものを通じて意味が異なって受け入れられるとか、そういう両者の連関の可能性をもう少し考えた方が理論的には深まるような気がするのだが、どうだろう。もっとも、実証研究をやるためであれば、あまりややこしいことは考えない方がよいのかもしれないけれども。
あとは、本書の文献リストを見ても、フェミニズムの理論的なもの、特に構造とアクターとかに関わる理論的なものって、2000年代の新たな展開がどれくらいあるのか、やや疑問に思えてしまうところもある。とりわけ、本書が考える秩序変動/制度変化を考えるときに、フェミニズムの手持ちの理論が発展させられておらず、2001年の江原氏の著作が「最新」で、しかもそれですら決定論傾向である、ということになると、他の分野の動向を見渡して、そこから理論的に摂取する姿勢が必要となってくるのではないか、と感じる。もっとも、それをやると、フェミニズム発の理論的刷新、ということにはならないのだけれども。
最後に、本書で取り上げられていた下記の本をちゃんと読まねば、と思った次第。積読になっているので(いや、少し読んだけれども)。
育児のジェンダー・ポリティクス (双書 ジェンダー分析)

育児のジェンダー・ポリティクス (双書 ジェンダー分析)