- 作者: 中島義道
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
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久しぶりに読んでみたら、うん、なかなかよかった。ということは、相変わらず日本が変わっていないということで、中島さんにとってはよくないことなのだろうけれども。
なかなかよかった理由の一つは、ここで書かれていることの多くのことには基本的に納得できる、ということだ。もっとも、僕自身は、電線が張り巡らされている状態についてはそれほど気にならないし、商店街的猥雑さについても、常に嫌いというわけではないのだが(でも、あちこちにのぼりを立てているのはどうかと思うが)。
もう一つは、中島さんの本は、「他者」の問題を扱っているということである。「他者」の問題というと、直ちに思い浮かぶのは外国人や宗教の問題だろう。でも、中島さんの本は、「われわれ日本人」とついカテゴリー化してしまうところにも「他者」が存在し、そういう「他者」に対して大多数の人々は排除的な振る舞いをする、ということを示してくれる。
ところで、そのような中でも、中島さんは「言葉」の力を信じること、まともな「対話」が行われることに、時々絶望しそうになりながらも(かなりその方向に傾いた本もあったと思うが)、なお希望を捨てていない。そこが、この本がよかった第三の理由でもある。