読書

迷走する両立支援―いま、子どもをもって働くということ

迷走する両立支援―いま、子どもをもって働くということ

 仕事と家庭の両立について、現在はフリーのジャーナリストが、多くの「ワーキングマザー」およびアメリカにおける両立支援関係者(学者含む)への取材をベースに、この問題についての学問的知見を絡ませながら論じた本。
 若干冗長と感じられるところがないわけではないが*1、ジャーナリストだけあって、「ワーキングマザー」への取材は、「育休をとって働き続けています。でも・・・」という、多くの「ワーキングマザー」(場合によっては「ワーキングファーザー」もだと思う)の「・・・」の部分に手が届いている。
 エンジニアや営業職などとして入社した女性が、働き続けることはできても、職域が限定され、昇進にもブレーキがかかってしまう現状、そのような状況の中での女性たちの苦悩が、痛いほど伝わってくる。
 アメリカ企業の両立支援への熱心な取組がアメリカの公的な社会保障制度の不備と関係しているという指摘も、「民間福祉による公的福祉の代替」という一般論ならば、さらっと流れてしまうところ、丁寧な取材で「なるほど」と思わせる。
 子どもの話を切り出すことでさえはばかられる職場のあり方を変えることなしには、「制度の充実」も画に描いた餅に過ぎない。しかし、どうやって変えることができるのか。本書から受けとるメッセージは深く、そして重い。

*1:これは、読む方の余裕の問題かも。