- 作者: 上野千鶴子
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 単行本
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とくに、「性別役割分業」という用語は(ブルジョワ)社会学とマルクス主義の対抗関係を踏まえれば全くナンセンス、というご指摘は、言われてみると確かにそのとおりなのだが、これまで「役割」という用語にちっともセンシティブじゃなかった自分としては、大いに反省(今頃、すんません)。
「おわりに」での「病理である以前にポストモダン的な個人の通常のあり方ではないだろうか」(35頁)という話は、挑発的で大胆ないかにも上野さんらしい語りであるとともに、「アイデンティティの複数性」や構築性などの把握の論理帰結でもあるのだろう。
しかし、同時に、そこまで言い切れるのかなあ/言い切ってよいのかなあ、という漠然とした印象を持たないわけではない。いずれ人間が社会の変化に対応できるようになれば「病理」は「正常」とみなされることになるだろうこと、そもそも「病理」と名づけるのは、他者であり、人は「呼びかけられ」て「病理」になるのだとすれば、「本質的な病理」なるものは存在しないということ、がわかっていても、「にもかかわらず…」と思ってしまう部分がある。その部分をどう言語化するかが問題なのだが。