「メモリアルな」と書くと、いささか大げさに聞こえます。が、実際、この年度末は、確かに僕にとって、少なくとも二つの意味で記念すべき年度末です。
一つ目は、名古屋に来てちょうど30年が経つということです。僕は、1989年4月に名古屋大学法学部に入学するために、名古屋にやってきました。名大は僕にとっては第二希望の大学でしたが、というか、そうであるがゆえに、合格通知が来るまでは名大に合格しても浪人するつもりでした。それが合格通知を見たとたんに「まあいいか」となって、名古屋にやってくることになりました。それから30年です。
やってくると、名古屋にはそんなに悪いところはありませんでした(笑)。でも、もちろんその時には、その後30年間も住み続けることになるとは思っていませんでした。
もう一つは、博士の学位を取得してからちょうど20年、ということです。僕は、1999年3月に「博士(法学)」(←実質的には「政治学」ですが)の学位を取得しました。僕が博士後期課程に進学する前後から、「課程博士論文」なる用語が唱えられ始め、「博士論文は3年程度で書くものだ」ということになりました。「書くものだ」と言われても、それまで誰もそのような形では書いていなかったのですから(僕の一つ上の先輩は3年ちょっとで書きました)、かなり途方に暮れることになりました。が、幸運にも3年間で博士論文を書き上げ、学位を取得することができました。1998年の秋の数か月の怒涛の追い込みは、今それをやれと言われてもできないでしょう。あれから20年が経ちました。
そう、大学生になってから30年が経ち、大学院を修了してからでも20年が経ちました。1989年から99年の10年間は、高校生→大学院修了の時期で、かなり大きな変化の10年と言えます。99年から2009年の次の10年間は、それほどには大きな変化とは言えません。それでも、政治学の学界の中で、ある程度は名前を知ってもらえる程度の存在にはなれたと思います。少なくとも、学会の懇親会を楽しみに行ける程度にはなりました。
(「メモリアル」ではありませんが)2009年以降の最後の10年間はどうでしょうか?この時期に2年間の在外研究に行くことができたことは、恐らく最も大きな出来事だったと思います。おかげで、それ以前にはほとんど英語をしゃべることもできなかった僕が、英語で授業を行い、多少は英語で発表したり文章を書いたりすることもできるようになりました。これはきっと相当に大きな変化のはずなのです。あまり実感がないのでもありますが・・・。
こうしてみると、確かに僕はこの30年間で色々なことを経験し、大きく変わったはずなのですが、他方で、大学生だった頃が「ついこの前」であるような感覚も残っています。「30年」はかなり長い年月のはずなのに・・・。48歳という年齢が、かつて思っていたよりは「若い」ということなのか、それとも単に懐古趣味なだけなのでしょうか。
どちらにせよ、これまでの30年を大切にしながらも、それを単に振り返るだけではなく、これからの道をさらに模索したいと思います。