毛利 2014

毛利康俊『社会の音響学――ルーマン派システム論から法現象を見る』勁草書房、2014年。第2章「システムの同定――ポスト福祉国家の法現象」まで読了。

多分、以下の部分がルーマンのシステム論理解として最も重要なポイント(として、著者が考えているところ)と思われる。

こうして、ルーマンにおいては、あるシステムが研究対象として同定された後に、もしそのシステムにおいて構造が成立しているならば、その構造はどのようにして成立し維持されているのかを解明することが理論的課題となる。しかも、社会システムの構造は、理論家によって客観的に特定されるものとしては扱われておらず、人びと自身によって安定的パターンとして扱われそのようなものとして通用するものがどのようにして成立するか、その成立によって人びとの経験の文脈がどのように変化するかという角度から問われる。このような問は、自然科学の諸分野で発見された構造を一般化と再特殊化の手続きで社会現象に当てはめるという方法によっては解くことが出来ず、固有の理論的努力を要求するものである。こうしてルーマン派、たとえば全体社会の構造は、人びとの規範的予期の整合的一般化によって成立するとし、そのメカニズムを解明したのであった。」(毛利『社会の音響学』16-17頁)