O'Flynn 2007

  • Ian O'Flynn, "Review Article: Divided Societies and Deliberative Democracy," British Journal of Political Sciece, Vol. 37, pp. 731-751.


ざざっと読む。
民族的に分断された社会における民主制度の構築についての二つの立場、つまり、一方の、比例代表制による「包摂」を志向するレイプハルトと、他方の、それぞれの集団の主張を「穏健化」するべく「妥協」へのインセンティヴを考慮に入れた制度設計を行うべきとするホロヴィッツに対して、「包摂inclusion」または「穏健化moderation」によって「安定性」を獲得するのではなく、「政治的平等」によって「包摂」と「穏健化」をもたらすことが重要であり、そのために熟議民主主義の諸原理が重要、と主張する(レビュー)論文。
著者によると、レイプハルトの議論では「包摂」は可能だが「穏健化」の保証はなく、ホロヴィッツの議論では「穏健化」は可能だが「包摂」の点で問題がある。これに対して、著者は、まず「政治的平等」という価値を基底に据えたうえで、「包摂」を「公開性(publicity)」に、「穏健化」を「相互性(reciprocity)」に、それぞれ読みかえることで、熟議民主主義が分断社会における民主的制度設計にとって持つ意義を主張しようとしている。
どう評価すればよいのかについては・・・また今度ということで。