読書

近藤正基『現代ドイツ福祉国家の政治経済学』(ミネルヴァ書房、2009年)、読了していました。

現代ドイツ福祉国家の政治経済学 (シリーズ・現代の福祉国家)

現代ドイツ福祉国家の政治経済学 (シリーズ・現代の福祉国家)

 福祉国家改革の政治過程を詳細にフォローしながら、分析枠組に沿った整理も効いていて、興味深く読める一冊だと思います。
 個人的には、ドイツについて、自分がなんだかんだ言って、他の国よりもまだ土地勘があることを認識できたのは、よかったです(笑)
 他にいくつか最近読んだ文章と(たまたまか)共通していたのは、政治勢力の連合形成のありかたの変化を、政策なり制度なりの変化に結びつけているところでしょうか。本書の場合は、CDU/CSUの社会委員会+SPDの伝統的社会民主主義者の連合から、CDU/CSUの経済派+SPDの「モダナイザー」の連合へのイニシアティブの移動がポイントです。
 議会アリーナ(国家)と労使交渉アリーナを並べる枠組みも、構成上の整理が効いているためか、これまでのいろいろな議論よりも、イメージがとらえやすいように感じました。
 個人的には、第5章のドイツの労使関係が企業レベルに変化してきている、という議論がとてもインフォマティブでした。あとは、(本論とはあまり関係ありませんが)CDU/CSU内でのオルド―自由主義と社会委員会の関係ですね。フーコーのテキストで、西ドイツ福祉国家建設にオルドー自由主義の影響を見る議論があるようですが(ちゃんと確認していないので推測)、やはり社会委員会なのだろうと。
 疑問点としては、「交叉連合」を強調すればするほど、「権力資源論」とあえて言うことの意味が薄れるのではないか、という点があります。つまり、多元主義モデルに限りなく近づくのではないか、ということです。権力リソース自体は、多元主義モデルでも当然考慮に入れるわけですから、なおさらです。
 それにしても、大政党の党員数と労組の組合員数の減少は、今後の政治と社会保障のありかたにどのような影響を及ぼしていくのか、20年以上前の「労働社会の衰退」や「脱組織化」の議論は、今こそ、あらためて検討されるべきなのかもしれません。