分断された社会と熟議

Ian O'Flynn, Deliberative Democracy and Divided Societies, Palgrave, 2006.

Deliberative Democracy and Divided Societies

Deliberative Democracy and Divided Societies

 実はまだイントロだけだけど、なかなか面白そう。熟議民主主義論と比較政治学との架橋の試み。しかも、「熟議民主主義者は、比較政治研究者による制度的処方箋を単純に受け入れる必要はない」と説く。「逆に、深く分断された社会に熟議民主主義を適用する主たる理由は、第一に、権力共有のための制度(power-sharing institutions)の選択を導くことのできる規範的な基準を提供することであり、第二に、一定の期間にわたってこれらの制度のその基準に向かうあるいはそこから逸脱する展開を管理することである」(p. 4)。
 あと、Parekhの議論を引きながら、民主的社会はその社会がどんな社会かについての一般的構想・アイデンティティを必要とするが、それは「財産、つまり私たちが所有している何か」ではなくて、市民が創出し再形成するものと捉えた上で、「熟議がなければ、そのようなアイデンティティあるいは関係性がこれまでにどのようにして発生あるいは発展できたのか理解することは難しい」と述べているところも重要。


 それにしても、自分の勉強不足がたたっていることときたら……。