大変ピンポイントなメモで恐縮だが、福間聡『ロールズのカント的構成主義:理由の倫理学』(勁草書房、2007年)の第1章第3節「熟議による民主主義と基礎所得」で、著者は、ロールズの立場から(も)基礎所得が正当化できることを論じている。余暇を基本財としてカウントして無条件所得保障を否定するロールズに対しても、ロールズ自身の「自尊」の概念を経由することによって、ロールズのように単純に余暇と賃労働をトレード・オフの関係としてとらえることはできない、と論じている。確かに余暇は「基本善の一つとなる」が、前提条件として「この余暇を活かす十分な資産を保持している」ことが必要なのである。「余暇を基本善の中に組み入れたことを肯定的に評価するならば、ロールズの意図とは反対に、余暇を自尊の基礎として充実させるための実質的な手段の分配が余暇を基本善に組み入れる以前よりも、一層顧慮されなければならないのである。」(89頁)
また、基礎所得と「互恵性」の問題については、著者は「我々の社会におけるほとんど全ての活動は貢献的活動と見なすことができる」(91頁)という立場を支持している。
- 作者: 福間聡
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2007/02/23
- メディア: 単行本
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