読書

授業の準備を兼ねて、先日の某新聞で言及されていたこの本の、プロローグ「『人生前半の社会保障』とは」および第3章「教育論/若者基礎年金論」の箇所を読む。

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想 (ちくま新書)

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想 (ちくま新書)

 広井氏が「人生前半の社会保障」の重要な柱として提案する「若者基礎年金」論は、ご本人も「ベーシック・インカム的な考えを特にその必要度が高い時期において導入したもの、ということもできるだろう」(106頁)と述べているように、time-limitedなベーシック・インカム論と言えるだろう。たとえば、クラウス・オッフェが下記の本の中で提案している「サバティカル・アカウント」なども、給付時期を限定するという点で同じような提案である。
What's Wrong With a Free Lunch? (New Democracy Forum)

What's Wrong With a Free Lunch? (New Democracy Forum)

 ところで、「人生前半の社会保障」という考え方自体が、この高齢化時代に逆行するものではないか、若者に甘すぎるのではないか、と考える向きもあるかもしれない。氏は以前から(日本の?)社会保障高齢世代への偏りを指摘していたと思うが*1、「人生前半の社会保障」が重要な理由を次のように述べている。

 理由は簡単で、それは人生における様々な『リスク』が退職期=高齢期にほとんど集中していたからである。その背景には、終身雇用の『カイシャ』と、強固で安定した『(核)家族』という、現役時代の生活保障を強固に支える“見えない社会保障”の存在があった。(20頁)

 賛否はともあれ、もっと議論されてよいテーマが新書でも登場してきたことは意味があると思う。

*1:と書いたが、ちょっと自信がない。エスピンーアンデルセンだったか?