速報

<注:以下のエントリは、9月11日の21時ごろの時点で書いたものです。いろいろ情報が不確実な段階でのエントリであること、「衝撃」もあって若干筆も滑っていることを前提としてお読みください(同日23時5分)>

 選挙の速報を見て驚くというか予想通りというか、ちょっと言葉がありません。
 驚きは、二つあります。
 一つは、「風」です。かなり以前に、中央政界に関わっていたこともある人に、「日本は『風』が吹くから恐ろしい」という話を聞いたことがあり、その時は「まあそうですねえ」などと聞いていましたが、ここまで「風」が吹くとは。。。
 正直、多くの人は別に郵便事業そのものがこれ以上便利になってほしいと思っているわけでもないでしょうから*1、「郵政民営化」の「先」の文字通り「改革」に「希望」を託した、ということでしょう。あるいは、「ここまで言い切る小泉首相に改革を託すしかない」という理屈で、「決断」したのでしょう。
 しかし、市場ベースの改革(文字通りの「保守」のつかない新自由主義)で「希望」が出てくる、あるいはありていに言えば「勝ち組」になれる、と本当にどれだけの人が思っているのか、僕にはよくわかりません。
 ここ数年、メリトクラシーの崩壊とか、総中流社会の崩壊とか、経済的格差の増大、果ては「希望」の格差の増大などと盛んに主張されてきたにもかかわらず、多くの人びとはまだ「中流」意識を強く抱いている(から、「改革」に希望が持てる)、ということなのでしょうか*2
 もちろん、「改革」に「希望」を抱かせるような争点のフレームアップ、という意味では、間違いなく選挙戦略の勝利、といえます。そういう意味では、これは「政治」の勝利です。 
 ところで、ここまで「民営化」の流れが加速すると、「官」のレーゾン・デートルというか、譲ることのできない境界線は果たして存在するのか、にわかに疑問に思えてきます。年金とか保険だって、理屈のうえから行くと、別に公的な制度でやるだけが「回答」ではありませんから、「年金制度が行き詰るのであれば、民間に任せればよい」という方向性だって、あり得ます。ただでさえ、日本では老後に備えて貯金して、多くの人は民間の保険に年金的なプランもくっつけているわけですから、なおさらです。
 もっとも、多くの「民意」の「官」に対する評価・要請は両義的で、「ムダ」な官はいらないが「必要」な官はいる、ということでしょう。だとすると、「全てを民間で」ということにはならないはずです。しかし、では、どこまでが「必要」なのか、と問われてみるとよくわからなくなっているのではないでしょうか。
 実際、「どこまで必要か」問題でいえば、それこそここ数年話題になっているように、監獄や軍隊でさえ、「民間委託」があり得る、ということが「理屈」の問題ではなく、「事実」の問題として存在しますから。もっとも、こちらの方は新「保守」主義の政治家には全面的には受け入れがたいアイデアかもしれません。
 もう一つは、投票率です。まだ最終的な数字はわかりませんが、今回の選挙でさえ、投票率は前回からわずか数%しか上昇していないようです。
 つまり、「風」の強さが圧倒的に見えるがゆえに、他方の(理由はいろいろあるとして)投票にさえ行かない多くの人びとの存在が、ひときわ印象的に映ります。
 現状のような投票方法を続ける限り、大幅な投票率の上昇、というのはありえないことなのかもしれません。
 
 それにしても、この結果はやはり驚きです。
 

*1:いや、思っているのかもしれません。推測です。

*2:後に書いているように、投票していない人が多く存在していますから、「格差」は、そこでフィルタリングされているといえるのかもしれません。