頂きもの

この間に、いくつか本を頂いております。

1)訳者の一人の荒木隆人さんから、ジェラール・ブシャール(荒木・古地順一郎・小松祐子・伊達聖伸・仲村愛訳)『間文化主義:多文化共生の新しい可能性』(彩流社、2017年)を頂きました。どうもありがとうございます。

 

間文化主義: 多文化共生の新しい可能性

間文化主義: 多文化共生の新しい可能性

  • 作者: ジェラール・ブシャール,丹羽卓,荒木隆人,古地順一郎,小松祐子,伊達聖伸,仲村愛
  • 出版社/メーカー: 彩流社
  • 発売日: 2017/12/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 2)寄稿者の一人の大倉沙江さんから、TSUJINAKA Yutaka and INATSUGU Hiroaki (eds.) Aftermath: Fukushima and the 3. 11 Earthquake, Trans Pacific Press and Kyoto University Press, 2018, を頂いておりました。どうもありがとうございます。大倉さんは、OKURA Sae and KUBO Yoshiaki, "Nuclear Damage Compensation: Mechanisms for Dispute Resoplution," の章を執筆されています。

 

Aftermath: Fukushima and the 3.11 Earthquake

Aftermath: Fukushima and the 3.11 Earthquake

 

 3)訳者の一人の金慧さんから、ハーバーマス(山田正行・金慧訳)『後期資本主義における正統化の問題』(岩波文庫、2018年)を頂きました。どうもありがとうございました。約40年ぶり(!)の新訳が、岩波文庫で登場です。

 

後期資本主義における正統化の問題 (岩波文庫)

後期資本主義における正統化の問題 (岩波文庫)

 

 4)岡野八代さんから、河野貴代美、対談:岡野八代『わたしを生きる知恵――80歳のフェミニストカウンセラーからあなたへ』(三一書房、2018年)を頂きました。どうもありがとうございます。興味ある一冊です。

 

わたしを生きる知恵 (80歳のフェミニストカウンセラーからあなたへ)

わたしを生きる知恵 (80歳のフェミニストカウンセラーからあなたへ)

 

 5)著者の古澤あすなさんから、『消えない差異と生きる――南部フィリピンのイスラームとキリスト教』(風響社、2017年)を頂きました。どうもありがとうございます。フィリピン南部でのイスラームとキリスト教の「決して消えない差異を内包した共存」を描き出したブックレットです。

 

消えない差異と生きる──南部フィリピンのイスラームとキリスト教 (ブックレット《アジアを学ぼう》)

消えない差異と生きる──南部フィリピンのイスラームとキリスト教 (ブックレット《アジアを学ぼう》)

 

 

高畠通敏先生との「すれ違い」

 高畠通敏先生の『政治学への道案内』(講談社学術文庫、2012年。原著1976年)と、『政治の発見――市民の政治理論序説』(岩波書店同時代ライブラリー、1997年。原著1983年)のいくつかの箇所を読む(読み直す)機会があった。前者については、恐らく部分であれきちんと読んだのは、恥ずかしながら初めてである。

 

 

政治学への道案内 (講談社学術文庫)

政治学への道案内 (講談社学術文庫)

 

 

政治学への道案内 (講談社学術文庫)

政治学への道案内 (講談社学術文庫)

 

 

政治の発見―市民の政治理論序説 (同時代ライブラリー (308))

政治の発見―市民の政治理論序説 (同時代ライブラリー (308))

 

 

 今回気づいたのは、これらの本で高畠先生が、「家庭と政治」についても論じられていることである。それも、「連続する同質的な場」(『道案内』291頁)、「このような政治社会の極小形態は、もちろん、家庭である。実際、家庭は、あらゆる意味で政治のモデルとして適切な条件を具えている」(『政治の発見』43-44頁)といった形で、つまり、家庭(家族)も、国家などと同型の一つの政治の場として理解する形で、論じられているのである。いくつか、国家レベルの政治とのアナロジーで家庭レベルの政治を論じている個所もある。私はかつて高畠先生の「市民政治」論をいくつか読んでいたし、また、『高畠通敏集』所収のいくつかの文章も興味を持って読んだことがあった。ただ、「家庭と政治」の話には、気づいていなかった(もしかしたら、書かれていたかもしれない)。

 今このことに気づくと、高畠先生とは「ニアミス」で終わってしまったことが悔やまれる。2004年の日本政治学会研究大会のことである。その時私は、「市民政治」をテーマとする分科会での報告を打診され、引き受けた。「市民政治」は高畠先生のテーマであり、討論者は高畠先生だった。ただ、その時の私は、当然(?)高畠先生が書かれたものに詳しかったわけではなく、そのころ考えていたフェミニズムと公/私区分の再検討をテーマに報告することにし、高畠先生の議論については、報告ペーパーの冒頭部で少し、当時刊行された『現代市民政治論』(世織書房、2003年)や『市民政治再考』(岩波ブックレット、2004年)の内容に触れた程度だった。そこで言われている「市民政治」は「私的領域」にも当てはまるのだろうか、といったことを書いたのではないかと思う。

 

現代市民政治論

現代市民政治論

 

 

 

市民政治再考 (岩波ブックレット)

市民政治再考 (岩波ブックレット)

 

 

 今にして思えば、「フェミニズムは公/私区分を必要とするのか?」という私の報告について、討論者としての高畠先生は、基本的に賛同してくださったのではないかと思う。私の報告は、公/私区分を空間的なものではなく、活動様式の区別として再構成し、かつ、「政治」を「公的な活動様式」として捉えることによって、「私的領域」にも「公的な政治」は存在し得る、と論じるものだったからである。これは、(議論の仕方が同一というわけではないけれども)『政治学への道案内』や『政治の発見』で「政治と家庭」について高畠先生が述べられていることと重なる。

 しかし、実際には、高畠先生のコメントを聴く機会はなかった。学会は2004年10月に開催されたが、先生はその年の7月に亡くなっていたのである。代わりに討論者として登壇されたのは、栗原彬先生だった。高畠先生をよくご存じの栗原先生には、上記に近いコメントを頂いたような記憶がある。ただ、高畠先生ご本人にはお会いできなかった。

 2004年の報告は、私にとって初めての学会報告だった。私が34歳の時で、今の政治学の若手が聞いたらびっくりするかもしれないけれど、当時は(おそらく)それほどおかしなことでもなかったのではないか。その最初の報告で、私はたでさえかなり緊張していたのだけれど、幸い、かなり多くの質問・コメントを頂くことができた。その時の報告論文は、その後雑誌『政治思想研究』第5号(2005年)に掲載され、さらに拙著『政治理論とフェミニズムの間』(昭和堂、2009年)の第3章となっている。こうしたことから、私にとっては忘れることのできない学会報告となっている。ただ、高畠先生との「すれ違い」も、「忘れることのできなさ」の一つの要因となっている。今にして思えば、テーマ的に先生と出会うべくして出会う場になるはずだった。しかし、すれ違いとなってしまった。

 あらためてご冥福をお祈りいたします。

 

政治理論とフェミニズムの間―国家・社会・家族

政治理論とフェミニズムの間―国家・社会・家族

 

 

お買いもの

 

日本のフェミニズム: since 1886 性の戦い編

日本のフェミニズム: since 1886 性の戦い編

 

 

 

通じない日本語: 世代差・地域差からみる言葉の不思議 (平凡社新書)

通じない日本語: 世代差・地域差からみる言葉の不思議 (平凡社新書)

 

 

 

教師という生き方 (イースト新書Q)

教師という生き方 (イースト新書Q)

 

 

頂きもの

1)共編者の一人の近藤正基さん、寄稿者の安周永さん、城下賢一さんから、阪野智一・近藤正基編『刷新する保守――保守政党の国際比較』(弘文堂、2017年)を頂きました。どうもありがとうございます。

 

刷新する保守-保守政党の国際比較

刷新する保守-保守政党の国際比較

 

 

2)執筆者の皆様からということで、本堂毅・平田光司・尾内隆之・中島貴子編『科学の不定性と社会――現代の科学リテラシー』(信山社、2017年)を頂きました。どうもありがとうございます。

 

科学の不定性と社会―現代の科学リテラシー

科学の不定性と社会―現代の科学リテラシー

  • 作者: 本堂毅,平田光司,尾内隆之,中島貴子,纐纈一起,辻内琢也,鈴木舞,渡辺千原,水野紀子,笠潤平,関根勉,米村滋人,吉澤剛
  • 出版社/メーカー: 信山社
  • 発売日: 2017/12/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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3)著者の上原賢司さんからは、『グローバルな正義――国境を越えた分配的正義』(風行社、2017年)を頂きました。どうもありがとうございます。博士論文をもとにした単著です。

 

グローバルな正義 国境を越えた分配的正義

グローバルな正義 国境を越えた分配的正義

 

 

4)訳者の森達也、鈴木将頼、金田耕一の皆さんから、アヴェシャイ・マルガリート『品位ある社会――〈正義の理論〉から〈尊重の物語〉へ』(風行社、2017年)を頂きました。どうもありがとうございます。

 この本は、「ソキエタス叢書」という新シリーズの一冊だそうです。

 

品位ある社会 〈正義の理論〉から〈尊重の物語〉へ (ソキエタス叢書3)

品位ある社会 〈正義の理論〉から〈尊重の物語〉へ (ソキエタス叢書3)

  • 作者: アヴィシャイマルガリート,森達也,鈴木将頼,金田耕一
  • 出版社/メーカー: 風行社
  • 発売日: 2017/12/20
  • メディア: 単行本
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5)訳者の仲正昌樹先生から、ハンナ・アーレント『アーレントの二人の師――レッシングとハイデガー』(明月堂書店、2017年)を、頂きました。どうもありがとうございます。「暗い時代の人間性について」と「八〇歳のハイデガー」の二本の論文が収められています。

 

アーレントの二人の師―レッシングとハイデガー

アーレントの二人の師―レッシングとハイデガー

 

 

頂きもの

 坂本治也さんから、日本ファンドレイジング協会『寄付白書2017』を頂いておりました。坂本さんは、第2章「人はなぜ寄付をするのか――NPO研究、行動経済学における知見から」の中の「『寄付をすれば幸福になる』は本当か?」などの、いくつかのトピックを執筆されています。

 

寄付白書2017

寄付白書2017

  • 作者: 寄付白書発行研究会,日本ファンドレイジング協会
  • 出版社/メーカー: 日本ファンドレイジング協会
  • 発売日: 2017/12/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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当面の予定

 今年度は、春に乙部、松元、山崎さんとの共著で『ここから始める政治理論』(有斐閣ストゥディア)と単著『熟議民主主義の困難――その乗り越え方の政治理論的考察』(ナカニシヤ出版)を出し、秋には参加民主主義論を寄稿した、神野直彦・井手英策・連合総研編『〈分かち合い〉社会の構想』(岩波書店)が出て、そして12月には新川、大西、大矢根各先生と共著で『政治学』(有斐閣)も出ました。表紙・カバーに名まえが載った本が三冊も出たのですが、これまで持続的に作業をしてきたものの出版が、たまたま今年に集中したというところがあります。だから、出版時期はたまたまなのですが、それでも、これまでそれなりの期間取り組んできたものを次々を手放す=刊行することができたことは、うれしく思っています。

 年度内の当面の予定ですが、年明けには、論文を寄稿した本が二冊出る見通しです。一つは、グローバル・ガバナンス学会設立5周年記念として刊行される、グローバル・ガバナンス学会編、大矢根聡・菅英輝・松井康浩責任編集『グローバル・ガバナンス学1 理論・歴史・規範』(法律文化社)です。この本に、「グローバル・ガバナンスと民主主義――方法論的国家主義を超えて」という論文を寄稿しました。本の目次はこちらからどうぞ。私にとって初めてのグローバル民主主義論ということになりますが、先に挙げた『政治学』の中でも少しグローバル民主主義について書いています。

 もう一つは、「資本主義と民主主義はなおも両立可能か?」という論文です。こちらは、デモクラシーとセキュリティをテーマとした論文集に掲載されます。「資本主義と民主主義の両立(不)可能性」をテーマに、1970年代~80年代のネオ・マルクス主義(オッフェ、ハーバーマス)の議論、近年の民主主義の危機論、シュトレークの「時間稼ぎ」論などを検討し、今後のありうる「両立(不)可能性」のいくつかのシナリオを試論的に提示するものです。

 あとは、3名の共著で一つの章を寄稿した、The Oxford Handbook of Deliberative Democracyも、2018年中には出るのではないかと思っています。でも、いつになるでしょうか。

 これらは出ることが決まっているものですが、それとは別に3月までに二本原稿を書かなければなりません。一つは、「ハーバーマスとフェミニズム」に関するものです。もう一つは、熟議民主主義における「規範と政治」の問題を扱う予定です。さらに、教科書が出たばかりであるにもかかわらず、実はもう一冊、政治学の教科書を準備中です。比較的大きな分量の教科書です。こちらは、執筆者間での検討を経て、二度目の原稿修正期間に入っています。この作業が終われば刊行が見えてきます。

 その他、某翻訳プロジェクトも進める必要があり、また、年度が明けたあとも「日常生活と政治」に関するプロジェクトの原稿締め切りや、もし報告申し込みが採択されれば英語での学会報告ペーパー執筆も待っています。原稿執筆はいつもいつも不安だらけですが、順次取り組んでいきます。