今年度は、春に乙部、松元、山崎さんとの共著で『ここから始める政治理論』(有斐閣ストゥディア)と単著『熟議民主主義の困難――その乗り越え方の政治理論的考察』(ナカニシヤ出版)を出し、秋には参加民主主義論を寄稿した、神野直彦・井手英策・連合総研編『〈分かち合い〉社会の構想』(岩波書店)が出て、そして12月には新川、大西、大矢根各先生と共著で『政治学』(有斐閣)も出ました。表紙・カバーに名まえが載った本が三冊も出たのですが、これまで持続的に作業をしてきたものの出版が、たまたま今年に集中したというところがあります。だから、出版時期はたまたまなのですが、それでも、これまでそれなりの期間取り組んできたものを次々を手放す=刊行することができたことは、うれしく思っています。
年度内の当面の予定ですが、年明けには、論文を寄稿した本が二冊出る見通しです。一つは、グローバル・ガバナンス学会設立5周年記念として刊行される、グローバル・ガバナンス学会編、大矢根聡・菅英輝・松井康浩責任編集『グローバル・ガバナンス学1 理論・歴史・規範』(法律文化社)です。この本に、「グローバル・ガバナンスと民主主義――方法論的国家主義を超えて」という論文を寄稿しました。本の目次はこちらからどうぞ。私にとって初めてのグローバル民主主義論ということになりますが、先に挙げた『政治学』の中でも少しグローバル民主主義について書いています。
もう一つは、「資本主義と民主主義はなおも両立可能か?」という論文です。こちらは、デモクラシーとセキュリティをテーマとした論文集に掲載されます。「資本主義と民主主義の両立(不)可能性」をテーマに、1970年代~80年代のネオ・マルクス主義(オッフェ、ハーバーマス)の議論、近年の民主主義の危機論、シュトレークの「時間稼ぎ」論などを検討し、今後のありうる「両立(不)可能性」のいくつかのシナリオを試論的に提示するものです。
あとは、3名の共著で一つの章を寄稿した、The Oxford Handbook of Deliberative Democracyも、2018年中には出るのではないかと思っています。でも、いつになるでしょうか。
これらは出ることが決まっているものですが、それとは別に3月までに二本原稿を書かなければなりません。一つは、「ハーバーマスとフェミニズム」に関するものです。もう一つは、熟議民主主義における「規範と政治」の問題を扱う予定です。さらに、教科書が出たばかりであるにもかかわらず、実はもう一冊、政治学の教科書を準備中です。比較的大きな分量の教科書です。こちらは、執筆者間での検討を経て、二度目の原稿修正期間に入っています。この作業が終われば刊行が見えてきます。
その他、某翻訳プロジェクトも進める必要があり、また、年度が明けたあとも「日常生活と政治」に関するプロジェクトの原稿締め切りや、もし報告申し込みが採択されれば英語での学会報告ペーパー執筆も待っています。原稿執筆はいつもいつも不安だらけですが、順次取り組んでいきます。