数土2013

数土直紀先生の『信頼にいたらない社会』勁草書房、2013年、をなお読書途中なのでありますが、ちょっとメモ。

 比喩的にいってしまえば、「危ない橋を渡らない」メカニズムはそもそも〈他者〉を視野から消し去ってしまうようなメカニズムであったが、「できるだけ多くのひととリスクを共有し、リスクを全体に分散させる」メカニズムは個人にとって致命的にならない形で〈他者〉を視野に留め置くメカニズムである。そして、〈他者〉を視野に留め置くことで、新しい道の可能性への挑戦を可能にするメカニズムなのである。・・・〔そして〕失敗を受け入れるための仕組みをつくることなしには、誰もが未知の可能性に挑戦できる社会など構想することはできない。(数土 2013: 147)

 自分にとってヒントになりそうなのは、ここで数土さんが「他者」への視点を持つことの(リスクとともに)積極的な面を指摘していることである。最近の私の議論の仕方は、「他者」との関係の大変さと、それにもかかわらずそれが不可避であることとを述べることが多い。この議論は、私の場合、そのまま「政治の擁護」につながっているのだが、ただ、これだと積極面が出てこない。
 自分の議論のスタイルがそうなのだと言ってしまえばそれまでなのだけど、もうちょっと違う考え方もできないのかと思うところもある。その時に、数土さんのスタンスは参考になりそうな気がする。