雀部先生

 マックス・ウェーバーなどの研究者である雀部幸隆先生が逝去され、告別式に出席してきました。
 直接のご縁は、学部の一年生の時、教養の「政治学」を履修したこと(もっともきちんと出席していなかったダメ学生ですが)、それから、修士課程のころ、ドイツ語講読ゼミを開催してくださっていて(先生は他部局だったので自主ゼミの形)、2年間出席していたことくらいでした。
 ただ、私にとってはやっぱり大学院時代の「先生」のお一人です。
 ドイツ語ゼミでは、ウェーバーまたはウェーバーに関係するテキスト(先生が共訳者であった、デートレフ・ポイカート『ウェーバー――近代への診断』名古屋大学出版会、の刊行直前の時期にその原書を扱いました)を読んでいたのですが、「ウェーバーの政治論は難しい。安易に語ることを許さない。でも最近、ようやく語れるかなと思えるようになってきた」といった趣旨のことをおっしゃっていたように思います。先生は当時60歳に近い年齢のころでしたが、その年齢でようやくなのかと、少し驚きました。実際、そのころ以降、先生はウェーバーの政治思想についての本を何冊も刊行されました。
 先生はまた、「ウェーバーの政治理論は戦後民主主義的な発想では理解することができない」といったこともおっしゃっていたように思います。「戦後民主主義」とは何かは別途検討しなければならない問題ですが、それにしても確かに、先生の提示されるウェーバー像は、「自由」「平等」「平和」といった価値観で表現されるものとは異なっていたと思います。
 12月に入って、ウェーバーについての原稿をいくつか読む機会があり、「雀部先生ならばどのように評価されるだろうか」と思っていたところでの訃報でした。日頃決してウェーバーを熱心に読んでいるわけではありませんので、なんという偶然だろうか、と思わざるを得ませんでした。
 ご冥福をお祈りいたします。

公共善の政治学―ウェーバー政治思想の原理論的再構成

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ウェーバーと政治の世界

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ウェーバー近代への診断

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