國分 2013

國分功一郎『来るべき民主主義』幻冬舎新書、2013年、を読了。

 前半が小平市住民投票運動の話、後半が民主主義を立法府だけでなく執行府(行政)との関係で捉え直すという政治哲学・理論の話という構成で、どちらかだけに関心がある人でも読める(もちろん両方読んだ方がよい)。
 小平の話は、実際に住民投票運動にかかわった経験からの興味深い話が多く含まれている。
 後半は、立法=主権という近代政治・国家原理の基礎を問い直す必要があるという話。立法=主権という想定のために、実際には執行・行政によってなされてきた「決定」への民主的コントロールが及ばなくなっている、と。だから、執行・行政をコントロールするための民主主義の制度を、議会制・代表制に付け加えていかなければならない、と。
 執行府であるはずの行政が実際には決定を行っているという指摘は、「官僚支配」の話とは少し別の話だろうと思う。政治学行政学だと、「実施過程における政治」の話になるのか、あるいは、国家論としての行政国家/福祉国家への批判との関係になるのか、さらにはガヴァナンス論の論点ということになるのか。全く議論されてこなかったとは思わないのだけど、確かに、政治を集合的な(拘束的)決定と理解する時には、行政によるそれを念頭に置いているわけではない場合が多いと思われ、あまりきちんと理論的関心が向けられていなかった問題かもしれないという気がする。
 言及されている文献では、市民運動については、村上稔『希望を捨てない市民政治』緑風出版、2013年、主権再考については、大竹弘二さんの雑誌連載論文「公開性の起源」『atプラス』(11号、2012年2月から)が重要文献となっている。村上さんの本は、別の方も評価されていて僕も持っているのだけど、いまだに積読。大竹さんの論文は、ちゃんと集めて読んでみようかなと思ってる。
希望を捨てない市民政治

希望を捨てない市民政治

atプラス 11

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