読書

ちょうど「家族」とか「結婚」とかについて、自分は結局先入観に基づいて考えていたのではないかと反省する機会があったこともあって、ご本人からご紹介いただいた、久保田裕之「家族社会学における家族機能論の再定位――〈親密圏〉・〈ケア圏〉・〈生活圏〉の構想」『大阪大学大学院人間科学研究科紀要』第37号、pp. 77-96, 2011年、を読む。
以下の久保田さんのブログからアクセスできます。
http://www.synoikismos.net/blog/2011/04/37.html

タイトル通り、「家族」を「親密圏」「ケア圏」「生活圏」という三つの「圏」の偶発的重なりとして理解しようとする論文。理論的に大変明確かつチャレンジングな試みで、大いに啓発された。やっぱり「理論」をやるという場合には、こういう風に、新しい構図を生みだす気概で取り組まなければならないと思う。
同時に、(マルクス主義の)国家論の論争を何となく思い出した。国家の(本質的な)機能を確定できるのかどうかという議論から(国家導出論争など)、より偶発的な諸言説のヘゲモニー闘争の場としての国家へ、みたいな話。もちろん、この国家論の流れでは「機能」の話が後景に退いてしまう点で、久保田さんの議論とは異なるのだけれども。