読書

テッサ・モーリス−スズキ『北朝鮮へのエクソダス』を読了。

北朝鮮へのエクソダス―「帰国事業」の影をたどる

北朝鮮へのエクソダス―「帰国事業」の影をたどる

50年前の東アジア諸国の経済状況と今との違い(あるいは、「少子化」が経済停滞を招くと言われる今と、既に存在している人々を賄いきれない昔と)、「国民」に限定された社会保障制度のもたらすもの、もちろん社会主義と「自由民主主義」の関係、そして様々な立場の人々の様々な思惑と苦悩まで、いろいろなことに直面させられた。
そして、歴史研究と社会「科学」との関係についても、考えさせられる。いろいろな文脈といろいろな思惑とが複雑に絡み合って、ある結果をもたらした、としか言いようがないと思われることについても、なお、より「洗練された」分析が可能なのだろうか。他方、複雑な絡み合いを記述した歴史研究の中にも、優れたものとそうでない者との違いが確かに存在するはずで、その「違い」は資料/史料の調査の程度と言った意味での「実証性」だけで決まるのだろうか(そうではないだろう)とも思ったりする。