押すことと退くことの難しさ

 人にどうやってアドバイスするかは、なかなか難しい。
 僕の基本的なスタンスは、「あなたの好きなように」だ。右がいいと言えば「いいんじゃない」と言い、左がいいと言えば「じゃあ、そうすれば」と言う。自分自身も、他人に「そうじゃなくてこうした方がいい」と言われるのは、あまり好きじゃない。
 でも、時には、「こうしなければ!」と言わなければならない時もある。あるいは、強く背中を押してあげた方がよい、と思うときがある。本人にもはっきり決められない時、あるいは、決まってはいるのだけれど、その方向に踏み出すことができない時、そういう時は多分あると思うのだ。
 どっちのスタンスでアドバイスすればよいのかは、そう簡単には決まらない。特に難しいのは、「ここは押すべきところかどうか」の見極めだと思う。「押す」ことでしか前には進めない時も確かにあるだろうけど、「ここが、押すべき時だ!」と思って押したら、逆にプレッシャーになって、うまくいかない時もある。無論、だからと言って、いつも「あなたの好きなように」だけで、うまくやっていけるような「自立した」人は、きっとそんなにたくさんはいない。
 放任だけでも、押しつけだけでも、恐らくたいていはうまくいかないだろうということは、わかっている。というか、そう思わない人もいるかもしれないけれど、僕はそう考えている。ただ、両者のベスト・バランスというのがあるわけではないので、その都度その都度、押したり退いたり、試行錯誤することになる。なかなか大変だけれども、いろいろ考えながらやっていくしかないのだろうなと思っている。