読書

齋藤純一編『社会統合』岩波書店、2009年。後半も読了。

社会統合――自由の相互承認に向けて (自由への問い 第1巻)

社会統合――自由の相互承認に向けて (自由への問い 第1巻)

後半も、各著者の「持ち味」が発揮されている。
 小川論文は、理論と事例を縦横無尽に扱いながら、都市における自由を作りだすモメントを探究する。それは、論理的であるとともに、よい意味で断片のパッチワーク的であり、両者のからまりが、著者らしいスケールの大きさを作り出している。
 宮本・諸富論文は、税制による再分配を扱うが、とりわけ、イギリスにおける改革がワークフェア的なものからベーシック・インカム的なものへと変容していったとの指摘が興味深い。
 遠藤論文も、思想と現実を行き来しつつ、ポスト・ナショナルな統合を探究する。とくに、EUの拡大が実は域外の人々にとっての自由の保障をももたらしつつあるとの指摘が、興味深い。
 最後の杉田論文も、きわめて著者らしい文章。杉田先生の議論が面白いところは、両義性にこだわりぬくこと、そして、そのことによって、一見ラディカルそうな見解も「まあ、あり得ますよね(でも問題もあるけどね)」的なところに落とし込んでくるところだろうか。また、(予備知識なく)素直に読んでも趣旨が理解できるとともに、とてもハイコンテクストであるところも、面白い。個別にもいろいろ面白い指摘があるが、特に198-199頁あたりが興味深い指摘。