読書

読了。良書であると思う。

空の戦争史 (講談社現代新書)

空の戦争史 (講談社現代新書)

 単なる歴史の記述ではなく、爆撃のロジック、とりわけ「精密爆撃」のそれを明確化した上で、それがいかなるプロセスで「戦略爆撃」や「飽和爆撃」へと転化していくかを記述的にだけでなく、論理的にも分析している。
 また、軍部内部での「爆撃をめぐる政治過程」の分析が、叙述に深みを加えている。
 そして、そのような歴史的な記述+論理的な分析を、爆撃とは被害者=他者への想像力の欠如であるとし、他者との「記憶の共有」――そのためには、他者の記憶の一面性を非難するのではなく、まずは自分たちの側の記憶を他者が共有可能なものへと変えていくことが求められる――を通じた平和構築を模索すべきとする倫理観が支えている。