読書

Colin Hay (2006) "(What's Marxist about) Marxist State Theory?, in Colin Hay, Michael Lister and David Marsh (eds.) The State: Theories and issues, Palgrave.

The State: Theories and Issues (Political Analysis)

The State: Theories and Issues (Political Analysis)

 マルクス主義国家論の展開を概観した論文。R・ミリバンド道具主義的国家観(行為者中心的)も、N・プーランザスの構造主義的国家観(国家は支配階級の長期的な利益に適うように行動する)も、いずれも「国家装置と支配階級の間の関係についての単純な見解」である。これに対して、その後のマルクス主義国家論の展開は、両者の関係についての弁証法的見解の採用へと進んだ。それは要するに、「政治的アクターを複雑で凝縮して構造化された国家装置の内部における戦略的主体として位置づける」立場である。この立場には、行為者中心的見解を継承したF・ブロックと構造中心的見解を継承したB・ジェソップが当てはまる。
 とりわけ、ジェソップに高い評価が与えられる。ジェソップは、「構造と行為者の相互関係についての真に弁証法的理解へと移行することによって、構造と行為者との人工的なデュアリズムを乗り越えることに成功している」からである。「構造と行為者は論理的に互いを伴うのであり、したがって、構造の分析でないような行為の分析はあり得ない。あらゆる社会的・政治的変化は、その戦略的文脈の構造化された領域――その内部で戦略が形成される――と衝突する戦略としての戦略的相互作用を通じて発生するのである」(p.75)。その理論は、「社会・政治変化の偶発性と決定不可能性の記述」なのである(ただし、「戦略的選択性」の範囲内での、ということになろうが)(p.76)。
 それにしても、マルクス主義国家論の今日的意義はどこに求められるのか。著者は、二点を挙げる。一つは、実態面であり、環境主義の観点からは単なる国家ではなくて「資本主義」国家の分析が必要になる、というものである。もう一つは、分析的なものであり、マルクス主義国家論の構造―行為者問題への貢献、というものである。