読書

いじめと現代社会――「暴力と憎悪」から「自由ときずな」へ――

いじめと現代社会――「暴力と憎悪」から「自由ときずな」へ――

 著者の近年の小文・対談を集めて出版された本。左派と右派に対する激烈な批判はともかくとして、いじめに関する内藤さんの視線と記述には、いつも心を打たれる。例えば、こういう具合だ。

市民社会の論理から隔絶されたまま閉ざされた学校らしい学校が人間存在をこのように変えてしまうことは、戦争や民族紛争が人間を変えるのと同じく、うんざりするほど平凡な悲惨である。(150頁)


 「うんざりするほど平凡な悲惨」。H・アレントの「悪の凡庸さ」(『エルサレムアイヒマン』)ではないけれども、きっとそういうものなのだ。
 前著『いじめの社会理論』以来の「生態学的設計主義」のアイデアも、僕は結構好きである。いじめの文脈ではもちろんないが、John Dryzek氏の「制度設計のインフォーマルな論理」と類似の発想が見られると思うからだ(あんまり理由になっていない…)。


いじめの社会理論―その生態学的秩序の生成と解体

いじめの社会理論―その生態学的秩序の生成と解体

Dryzek氏の論文は、下記の本に所収。
The Theory of Institutional Design (Theories of Institutional Design)

The Theory of Institutional Design (Theories of Institutional Design)