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丸山眞男回顧談〈上〉

丸山眞男回顧談〈上〉

 1988年から1994年にかけての丸山眞男氏に対するインタビューの記録。この上巻では、敗戦直後の時期までの話が収められている。
 丸山眞男研究にとってどのような意義があるのかという点はともかくとして、もともと昭和初期の歴史に関心を持って大学に入ったつもりの僕は、1930年代ごろの社会状況というものに、それなりに関心があるらしく、(当時の東大内部の事情も含めて)面白く読んだ。
 社会状況そのものというわけではないが、とくに印象に残ったのは次のような発言。

新カント派というのは非歴史的なのです。非歴史的なものの持っている強みというのかな。時代がどうだからというのではなくて、絶対的なある価値に照らして正しいかどうかということが、まず来るわけです。非常にはっきり、時代のほうが間違っているのだ、時代は間違った方向に歩みつつあるということを、当たり前のこととして言えるわけです。圧倒的に、時代がある方向に向いていますと、歴史主義だと、これが歴史の動向なんだという主張にかなわないのです。(200頁)


 僕の学部時代の先生が、この丸山氏の考えを知ってか知らずか(多分、どこかで聞かれていたのではないか、と推測するが)、同じようなことをおっしゃっていたのが記憶に残っています。