引き続き、下記の本という学会年報から、新川敏光さんによる「はじめに」を読む。
- 作者: 日本比較政治学会
- 出版社/メーカー: 早稲田大学出版部
- 発売日: 2005/06
- メディア: 単行本
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このレビューがとても勉強になります。少なくとも実証研究初心者の僕には。限られた紙面で、それぞれの論文の理論的・方法論的特徴がしっかりと押さえられ、かつその足りない部分が的確に(と思われた←未読論文もあるので)指摘されています。
で、自分にとっての問題は、やっぱり、「変数のコントロール」ですね。実験で変数がコントロールできることと、計量分析でコントロールできそうなのとは、理屈としてよくわかります*1。そうではないタイプの研究でどうやって変数をコントロールすればよいのか、ということです。
要は、当該独立変数以外の変数ではうまく説明できないよ、ということを示しておく、ということになるでしょうか。例えば、あるケースを説明するのに、「政治制度」という独立変数では○○の理由で説明がつかないので、政治アクターの権力資源動員という独立変数を採用するとか。比較研究であれば、増税の決定がA国で可能だったがB国では不可能だった理由は、議会制度(立法―執行関係)、決定時期、世論の動向、圧力団体の活動内容、当該国の置かれた国際環境等々は同じだったので、これらでは説明できず、政党そのもののイデオロギーで説明できる、とか。
そうかそうか…と、自分で書いているうちに理屈だけはわかったような気になってきました。
こういう「○○という独立変数では説明できないので、××という独立変数で説明する」というタイプの研究では、しばしばこの「○○では説明できないので」という部分は厳密な検証の対象というよりは、本論で「××で説明する」をやるための導入(というか前振りというか)として置かれているような気がします。つまり、イントロダクション的な部分で、批判をかわすためにいちおう言及しておく、というような感じ。
もちろんすべての研究がそうだ、などというつもりはありません。ただ、もしも「変数のコントロール」ということが実証研究において非常に重要なことであるならば、実験でも計量でもない、それこそ質的な研究では、コントロールされた後の変数で説明する作業と少なくとも同程度には変数のコントロールの妥当性を示す作業も重要である、ということになるのではないでしょうか。つまり、論文の検証作業のかなりの部分を後者が占める、ということになってもよいのではないか、ということです。言い換えると、「なぜ変数Bでは説明できないか」を証明する作業が論文の半分くらい*2のスペースを占めてもおかしくないのではないでしょうか?なぜならば、やはり質的な研究では、どうしてもコントロールというのは恣意的なものとなる傾向を帯びると思うからです*3。
そういう意味で言うと、若くして故人となってしまわれた下記の方の遺作などは、かなり秀逸だったと言えるのではないでしょうか。
金融ビッグバンの政治経済学―金融と公共政策策定における制度変化 (RIETI経済政策分析シリーズ)
- 作者: 戸矢哲朗,青木昌彦,戸矢理衣奈
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2003/01
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なお、僕が現在執筆中の自分の論文の中では最も「実証」系の論文では、もちろん(?)以上のようなことはできておりませんorz。