「思い切った施策で人材確保――企業の先進例を見る」(『中日新聞』5月5日朝刊)
 いくつかの企業での仕事と子育ての両立支援策の事例が紹介されております。以下、大雑把なまとめでご紹介。問題は、これらの制度がどこまで活用されているか、とくに男性社員に関係する施策が、ということではありますが。

 子どもが三歳になるまでの時期に、連続二週間の有給育休制度を創設、など。
→「社員同士が『お互いさま』と思える環境をつくる」というのは、大変大事なことです。女性のみだと、「だから女は……」となるのは必至ですから。

  • コンビ

 第一子、第二子誕生時に50万円、第三子以降は200万円の出産一時金の支給。
 男性社員に、子ども誕生から半年以内に連続五日間の有給の育休取得を義務付ける「ハローベビーホリデー」。
→「社員の育児経験を新商品開発に生かす」というのは育児器具メーカーならではの理由だですが、「パパクォータ」の一種ですね。

  • NEC

 保育所入所のための引越しや子育てのために親を呼び寄せるための引越しの費用の会社負担。
 在宅勤務用の自宅への高速通信回線設置費用も負担。

  • 味の素

 育児短時間勤務を小学4年進級までに延長。
 子ども看護休暇制度(年10日間)の創設。
 「人材の流動化、社員の忠誠心低下が進む社会情勢の中、『人を大事にする』という方針は、豊富な経験と高い技術を持つ人材の確保、生産性の向上につながる」(同社広報部)とか。
→「生産主義」の論理はともかく、忠誠心低下問題は、大学もひとごとではないと思うのですが…。

 育児フレックス制度を、3歳の3月末→小学校就学前までに拡大。
 自社ビルの一部を都の認証保育所に提供。

 記事の中には、「企業の目的は利潤の追求。国が企業に少子化対策のコストを負担させるのはおかしい」と「本音」を漏らす「管理職もいた」とあります。うーむ、企業にとっての「利潤の追求」、大学にとっての「真理の追究」は、何か政策に反対するときのキーワード
ですねえ(善かれ悪しかれ、と言っておきましょう)。まあ、それと、民間にやらせるのは費用節減のため、という側面が全くないといったらウソになるかもしれませんね。でも、だからこそ、「企業にコストを負担させるな」というのならば、併せて「国はしっかりとこの方面におカネを使え」と主張していただきたいところです。
 最後は、武石恵美子さん(ニッセイ基礎研究所)の言葉、「…少子高齢化の流れの中では子を持ちながら働く人が主流になっていく。従業員の変化に対応するのは企業の責務。短期で見ると収益向上にならなくても、長期的に見れば社員教育の投資を回収でき、イメージ向上にもなる。…」。
ついでに、武石さんの共著をご紹介。

男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット (中公新書)

男性の育児休業―社員のニーズ、会社のメリット (中公新書)

調査に基づいたどちらかといえば淡々とした記述の中に、職場で男性同士が子育てのことを話せる/話せないことの持つ意義とか、育休などへの消極的な意見に対して、これまでの福利厚生と異なる福利厚生として考えるべきと説くとか、示唆的な意見も盛り込まれております。