早速、杉田敦編『「国家」は、いま――福祉・市場・教育・暴力をめぐって』(岩波書店、2011年)をざっと読了。
「はじめに」によると、2008年から研究会が始まったということだけれど、ちょうどそのころ(か、そのちょっと前から)、杉田先生は、「国家」にとりわけ関心を集中させていらっしゃったように思うので、そのような先生の関心が結実した結果の一つということになるのだろう。
連続討論 「国家」は、いま――福祉・市場・教育・暴力をめぐって
- 作者: 杉田敦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/04/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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個人的には、〈暴力〉のセクションの189頁以降のやりとり、特に「暴力」と「強制」をめぐるやりとりが興味深かった。「国家的なもの」を「市場的なもの」から切り分けるときに、能率とか効率以外のどのような論理があり得るのかという杉田氏の問いかけに対して、「暴力」なのか、「強制」を担保する「合法性」なのかをめぐって、議論がなされている。しかし、これも議論の中で指摘されているように、いずれにしても、この議論の仕方では、「近代」国家が市場化され得ない「国家」の領域であり、それに付け加わった国家の「現代」的な部分は「市場」に委ねられることもあり得るという話になりそうな気がする。今日、国家とは何かを論じると結局(「現代」ではなく)「近代」に戻ってしまうということを、どう考えればよいのだろう。「国家」は、本質的には「近代的」なものとして考える他はない、ということだろうか。(ちょっとうまく整理できていない)
あと、(国家自体とは少しずれるけれど)〈市場〉のセクションでの原発と再生可能エネルギーとの関係についての議論も。
最後に、再び「はじめに」によると、本書は、研究会の「成果の一端」ということなので、このあとに、各論者の論考を集めた本など出版されると面白いのではなどと、つい期待してしまうのでありました。