読書

井上寿一『理想だらけの戦時下日本』ちくま新書、2013年、を読了。1937年〜39年の国民精神総動員運動の実際がどのようなものだったのかを平易に解き明かした本。比較的淡々として叙述ですいすい読めるのだけど、その中に、「やはり、こういうものはうまくいかないのではないか」という著者のメッセージが盛り込まれている。

それにしても、この本を読むと、対米開戦以前の段階で既に日本はかなりの苦境にあったのだとあらためて認識させられる。でも、「だから、これ以上の戦争は止めるべき」ではなくて、「だから、一層の戦争によって打開するべきだ」となったところが、今でも事例を変えてあちこちで見られるような気がして、何とも言えない気持ちになってしまう。