読書

平木典子・柏木恵子課家族を生きる』東京大学出版会、2012年、を読了。よい読書でした。

家族を生きる: 違いを乗り越えるコミュニケーション

家族を生きる: 違いを乗り越えるコミュニケーション

いくつか引用。たとえば、こういうところ。

つまり、何が問題かというと、相手の状況を考えていないということと、いま自分がおかれた状況を説明していないということ。相手の立場にも立たない、こちらの立場も説明しないで、ツーカーだと思っているということです。こういう状況が頻繁に起こっているわけです。語り合って違いをわかり合うことでしか、人間がともにいきていくすべはないのに……。以心伝心という思い込みは、複雑化したいまの社会では通用しません。(35-36頁)

「話せばわかるというのは幻想だ」などという前に、どこまでまともに「語り合う」ことを試みたのか/試みられたのかと、自分がどこまで自分の考えを説明したのか、そして同時に、相手の状況を考えてみたのかと、問うべきなのである。

柏木:そういう点でも、子どもが生まれたとたん、性別役割分業が確立することが、要は、夫婦関係を降りてしまうことになっていて、その問題がずっと続いていますよね。
平木:忙しい間は、性別役割分業でおたがいにいいと思っているのですが、夫婦関係は母子連合に取って代わられてしまい、その結果、母子で家庭をマネージしていってしまうことになります。
柏木:父親が定年退職して家庭に戻った時に、それまで母親だけが担っていた家事をどのように再構築していくかは大きな課題でしょうね。……(130頁)

こういうところを読むと、性別分業を「合理的」とする説が、いかに時間軸を無視しているか、ということかなと思ったりする。