読書

小熊英二『社会を変えるには』(講談社現代新書、2012年)を、ちびちびと読んでいる。前から読んだと思えば、後の方を読んだりしたあと、今は、前から順番に読んでいる。

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

 小熊さんの本を全部読んでいるわけではないけれども(『単一民族神話の起源』の最初の方、『民主と愛国』、『1968(上)(下)』、そして『癒しのナショナリズム』くらい)、彼の本は読み始めると、ちびちびと読み続けてしまうし、あれだけ分厚いのに、終わってしまうのが惜しい気もする。この本も、僕にとってはそんな本である。今までの彼の本とは違うタイプの本だけれど。
 驚くのは、その説明の「わかりやすさ」である。たとえば、なぜ対話的な民主主義なのかに関する叙述を読むと、自分が書いてきたことが、いかに単に小難しく書いていただけか、または、誰かの言ったことをなぞっていただけかを痛感させられる。簡単な言葉で書いてあるけれども、単なる「教科書」というのではない形で腑に落ちてくるような気がする。
 「再帰的近代化」をはじめとして、ギデンズやベックの議論がかなり肯定的に参照されている(ように思われる)ことには、ちょっと驚いたし、このことで批判も出てくるのだろうなとも思う。でも、このあたりの記述も、自分が言いたいことを、自分よりもはるかに「わかりやすく」書いておられるように思われた。
 唯一残念なのは、参考文献リストがついていないことだけれど(もっとも、本文中で直接取り上げている著作名は適宜書かれている)、これは(もちろん)意図的というか、きっと参考文献リストをつけだすと、時間がもっとかかって刊行が大幅に遅れるか、ページがもっと増えて、いよいよ「新書」であることがカテゴリカル・ミステイクになるか、その両方か、のいずれかであったのだろうと思われるので、仕方ないことなのだろう。きっと。