年報政治学

日本政治学会より、『年報政治学2007-? 排除と包摂の政治学――越境、アイデンティティ、そして希望』木鐸社、2007年が届く。


主な目次は下記の通り(木鐸社サイトより)
http://www.bokutakusha.com/announcement/announce-07.html#link15


はじめに 河田潤一
<特集論文>
・帝国の時代におけるリージョンとマイノリティ 竹中 浩
−ロシア・メノナイトのカナダ移住を手がかりにして−
・無国籍者をめぐる越境とアイデンティティ 陳 天璽
・文化的多様性と社会統合 辻 康夫
−カナダの先住民とフランス系住民をめぐって−
・越境社会と政治文化 小川有美
−「ヨーロッパ」は「市場」か「要塞」か,深層(サブ)政治界か?−
・都市(集合住宅)における包摂と排除 竹井隆人
ゲーテッド・コミュニティとディスペイシャル・ デモクラシーをめぐって−
・排除に抗する社会統合の構想 齋藤純一
ロールズハーバーマスにおける相互承認をめぐって−
・シティズンシップ論再考 岡野八代
−責任論の観点から−
・「新しい人」の政治の方へ 栗原 彬
<公募論文>
・大正後期の「内地在留朝鮮人」に対する「善導」主義的政策の論理と実態 宮地忠彦
・ルイス・ブランダイスにみる「国民国家」,「民主主義」,「パレスチナ問題」 池田有日子
<学界展望>
2006年学界展望 文献委員会
2007年度政治学会研究会日程 事務局


早速、齋藤論文と岡野論文を読む。
 齋藤論文は、互恵性・相互承認をめぐるロールズハーバーマスの議論を丁寧にあぶり出し、整理している。内容的にはとても規範的な議論なのだけれども、しかし議論の整理が実に行き届いていて、かつよい意味で坦々としているので、(これもよい意味で)強い価値的な主張を一面的に行なっているという印象を受けない。また、(少なくともハーバーマスについて)いくつかのテキストの、それほどまとまって書かれているわけでもない(と、僕には思われる)記述を拾い集めつつ、決して恣意的ではないようなかたちで再構成して提示してみせ、かつその再構成はまさしくその論者の主張であろうと納得させるその技量に、あらためて恐れ入る思いがした。
 岡野論文は、「市民」「シティズンシップ」を論じる際に、「ケア」や「依存」を組み込まなければならないことについて、普遍主義的なシティズンシップとの対比を明確にしながらやはり丁寧に論じている。「義務」と「責任」についての違いも、(これはグッディンの議論だけれども)ああそういうことかと、ひとまず理解したつもりになる。
 それにしても、お二人の論考を読むにつれ、自分はつくづく浅薄な議論をしているなあと、反省というか自己嫌悪に陥る。。。腰を据えて勉強に励めということだ。