読書

読了しないままに、別の本に手を出すこと多し。

正義と境を接するもの: 責任という原理とケアの倫理

正義と境を接するもの: 責任という原理とケアの倫理

副題は、「責任という原理とケアの倫理」。文字通り、H・ヨナスの責任の原理とC・ギリガン以来のケアの倫理とを、正義の原理との関係にも注意しながら検討する、ということのよう。
 後半のケアのところからあちこちぱらぱらと読み始める。叙述は明快でとてもわかりやすい。
 一つだけメモ。

それにもかかわらず、ノディングスは両者の関係を相互性(reciprocity)と呼んでいる。ただし、ここでは「あげる贈物ともらう贈物は同じではない」(Noddings 1984: 74)。では、ケアするひとはケアされるひとから何をうけとるのだろうか。
 私はそれをケアするひとの倫理的自己へのケアへの励ましだと考える。むろん、ケアされるひとが直接に励ますわけではない。そのようなこと(たとえば、小さな子どもが親に「がんばって」と声をかける)が起こるときには、ケアされているひとがケアするひとをケアしているのである。そうではなくて、ケアするひとは自分のケアリングが相手に快くうけいれられ、相手の成長に寄与しているのをみて、ケアするひととしての自分に自信を得る。おそらくこれがケアされるひとからの贈物の意味であろう。(181-182頁

 これは著者の解釈のようだが、ノディングスの「互恵性」の指摘をこのように敷衍して受け止めるか、それともケアは「互恵性」の範疇には収まらないと理解するかで、立場が異なってくるように思う。