頂きもの

父より。ちゃんと紹介せよとのことですので。いえ、「はまぞう」になかなか出なかったんですよ。

保育所の廃止

保育所の廃止

〈目次〉
 第1部 公立保育所の廃止裁判
はじめに
? 公立保育所の廃止・民営化裁判
? 地方自治体の役割・任務と公立保育所の廃止・民営化
? 公立保育所廃止裁判(取消訴訟)の論点
? 執行停止、仮の差止め――「仮の救済」制度
? 損害賠償請求
 第2部 意見書(横浜地方裁判所宛)
 第3部 資料編
あとがき

 待機児童をゼロにするためには保育所を新増設したり、定員増をはかったりしなければならない。だが、閣議決定により、それを「最小コストで」しなければならないことになってしまった。そこで、多くの地方自治体は、既設の公立保育所を廃止・民営化することがもっとも手っ取り早い方法であると考えるようになった。
 つまり、こうである。公立保育所であれ私立保育所であれ、「保育に欠ける」子どもを保育所に入所させた場合、市町村はその子どもの保育経費(保育所運営費)を支出(負担)する。しかし、よく知られているように、この場合、同じ条件であれば、私立保育所に支出する金額のほうが少なくてよいのが通例である。なぜそうなるかといえば、経費支出の基礎とする人件費が私立保育所のほうが低いからである。公私立保育所間の人件費に格差※があるために、公立保育所を廃止し、入所している子どもを私立保育所に移し変えたほうが経費の「節減」ができるのである。
 ※この人件費格差は、私立保育所のほうが職員の平均年齢が低く、また、職員の配置数が少ないことにより生じるとみられている。 (14-15頁)

 本の冒頭でも示唆されていますが、保育所でも結局「コスト」はどこで多くかかるかといえば、それは人件費で、要は保育士の給料です。(保育所運営の)民間企業に任せて、しかもそこが若い保育士さんあるいは非正規雇用の保育士さんを多く揃えれば、コストダウンができることでしょう。でも、それで大丈夫なのか、という問題(少なくとも保護者サイドの不安)が当然残るわけです。かつての共同保育所に代わって、今では事業所内保育所の設置がトレンドとなっていますが、「安くあげよう」とすると同じ問題が発生します。
 雇用形態でその人の優劣が測れるわけではもちろんなく、要はおカネをかけない姿勢が透けて見えると、その保育所(と管理者)そのものへの不信が醸成されるということです。子どもを預ける側からすれば、「安心」「信頼」できるところに預けたいし、その「安心」「信頼」は、例えば、これまた最近流行の、保育中の子どもの画像をPCや携帯に送信してみることができれば確保される、というものでもないでしょう。してみると、「保育所についての「安心」「信頼」とは何か?どうすれば、これらは増すのか?」ということが、もっと議論されるべきであるように思われます。
 なお、「カネをかければよいというものではない。金をかけなくてもできることはあるはずだ」というのも一理ないわけではありません。でも、同時に、「欲しがりません。勝つまでは。」だけではやっぱり勝てなかった、という教訓もあるわけです。