この3月で畑山敏夫先生が佐賀大学を定年退職された。フランス政治、とりわけフランスの緑の党や「国民戦線」の研究を長く行われてきた先生である。こんなところにこんなことを書かれても、先生はさぞかし迷惑に思われるかもしれないけれど、ひとことふたことだけ述べさせていただきたい。
私が畑山先生に最も直接的にお世話になったのは、畑山先生と丸山仁さん編集の『現代政治のパースペクティブ――欧州の経験から学ぶ』(法律文化社、2004年)の執筆者に混ぜてもらったことである。と言っても、私に直接に声をかけてくださったのは、大学院の(それなりに上の)先輩にあたる丸山さんであった。とはいえ、編集会議では、畑山先生のとてもソフトな進行に随分ほっとさせていただいたことを、昨日のことのように覚えている。
『現代政治のパースペクティブ』は、私が初めて執筆に誘っていただいた本だった(同時期に共編で『ポジティブ・アクションの可能性』ナカニシヤ出版、2004年、という本を出したが、こちらは自分(たち)での企画)。そういう意味で、とても光栄に思った企画だった。同書に寄稿した拙稿「民主主義の新しい可能性――熟議民主主義の多元的深化に向かって」は、丸山さんから「現実を意識した文章を」と言われて、私なりにそういう意識で書いたものだったが、思っていた以上には読んでいただいたような印象がある。「あの本で読みました」みたいなことを言われたことが何度かあった。その後、この文章は、加筆修正のうえで、拙著『熟議の理由』(勁草書房、2008年)の第5章となった。こういう事情で、畑山先生の下でできた『現代政治のパースペクティブ』は忘れがたい本となっている。
畑山先生とは、また別のご縁(?)もある。私は、その頃あるいは学部・院生時代は、今よりもずっとヨーロッパ政治に関心があるつもりだった。また、ドイツ史研究者である母の影響もあり、私は故・山口定先生の書かれたものには親しんでいた。畑山先生は、その山口先生の弟子筋(「山口組」!)にあたり、また、(これは全くの偶然だが)母が同僚になったこともあって、勝手に何となく親しみを感じさせていただいていたところがある。学会等でお会いすると、いつも独特の(?)柔らかい口調で話しかけてくださることを、ありがたく思っている。
そんな畑山先生が大学を退職されたことに、多少の寂しさを感じるところがないわけではない。でも、きっとこれで研究をやめたとおっしゃるわけではないだろうから、また学会などでお会いできることと思っている。それでもひとまず、長年お疲れさまでした。
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