変わったこと

 妻によると、僕は若いころと比べて、感情をよく表現できるようになったらしい。たとえば、「テレビを見ていてよく涙を流すようになったよね」、と。
 自分でも、以前よりもずっと素直な心でいることができている、とは思う。ありていに言えば、「自分を隠して」いることが少なくなったし、「内弁慶」と言われるような表裏の違いも少なくなった(おそらく)。
 子どもの頃の自分は「内弁慶」の典型で、家の中ではよく怒っていた。家族はさぞかし困り、持て余していたと思う。でも、外では「よい子」だった、というよりも、まさに外で「よい子」にするから内では暴れるのだっただろうと思う。そして、外では「よい子」だから、ふざけたりすることも苦手だった。何か「窮屈」だったのだろうと思う。
 20代から30代にかけて、そういう「窮屈さ」は、段々なくなっていったはずだ。それでも、「不機嫌」になる癖はなかなか治らなかった。自分の中の「窮屈さ」がまだ強く残っていたのだろう。そうやって不機嫌になることも、ようやく最近になって、かなり減ってきた気がする。「窮屈さ」がかなりなくなってきたのだろう。
 「内での怒り」以外の表現が比較的素直に出るようになってきたのも、きっと「窮屈さ」が減ってきたからではないか。そして、僕が自分の中の「窮屈さ」を少しずつ溶かすことができたのは、多分妻のおかげである。彼女との暮らしを通じて、僕は以前よりもずっと素直でいられるようになったのだろう。その結果が「歳をとった」ということならば、歳をとるのもそんなに悪いことではない。