柏木2013

以前に頂いた柏木惠子『おとなが育つ条件――発達心理学から考える』岩波新書、2013年、を読んでいる。柏木先生の家族論/夫婦論には、納得するところが多い。
たとえば、夫婦間の(ディス)コミュニケーションに関する、以下のような記述。

 先に夫と妻は同じ日本語で話していながら意思疎通は悪く、相手を非難したり諦めたりしている事情を述べました(第3章)。コミュニケーション・スタイルは生活の中で習得し特徴づけられていくので、夫と妻の生活の分離が、夫は職業生活で身につけたリポートトーク、他方、妻は家事育児の生活で身につけたラポールトークとなり、それぞれ自分とは異質な相手のコミュニケーションに戸惑い不満を抱き、遂には対話不能となっている場合が多いのです。
 相手のいうことに耳を傾ける「傾聴」と、自分本位ではなく相手の気持ちを洞察し共感する「共感的態度」は、対等な関係をつくり心を繋ぐコミュニケーションの要件です。ところがこれが夫では弱く、その結果、コミュニケーションは夫上位妻下位という非対称の関係になっているのです。(同書、86頁)