近況

なんだか最近、研究のことをあまり書いておりませんが、研究していないわけではありません。


今書いているのは、一言で言うと、「デモクラシーとアーキテクチャ/ナッジ」についての論文です。ちょっと長め。4万字くらいの予定。
流行りものを追いかけているだけではないかと言われれば否定はしませんが、ただ、拙著『熟議の理由』の結論部で予告してあるような話の一部ということです。また、『思想地図』Vol. 2掲載論文で論じた「民主主義のための福祉」の話の、「のための」の部分を発展させる試み、でもあります。あと、『思想』5月号論文「熟議民主主義における『理性と情念』の位置」のサンスティーンに関する叙述のあたりを、さらに引っ張るイメージになると思います。「分断社会」における熟議民主主義、という論点も盛り込もうと思ってはいるのですが、これは構成上の問題と、僕の能力と時間と紙幅の問題から、最終的には取り上げないかもしれません。


僕の把握している限りでは、アーキテクチャとかナッジをデモクラシーと明確に絡めて論じている業績は、世界的に見ても、あまり数は多くなく(皆無ではありません)、その意味では、自分ができることもあると踏んでいます。日本では、多分鈴木謙介さんの『ウェブ社会の思想』(NHKブックス、2007年)の「工学的民主主義/数学的民主主義」の問題提起が重要です(僕はウェブ関係は基本的に扱いませんが)。あと、きちんと向き合うことができるかどうかは定かではありませんが、東浩紀さんの「一般意思2.0」にまつわる議論も、重要な問題提起と思い、少し議論空間が重なってくると思います(が、エクスキューズしますが、多分まともに向き合うことはできません)。


実はこれは某研究会の企画でありまして、その研究会が立ちあがったのは、確か2007年初頭か、もしかしたら2006年ですので、少なくとも3年間くらい経過しております。この間、一方で他の仕事に追いまくられていて、他方で、このテーマについて、なかなか僕の頭の中の整理がつかず、今に至っているわけです。が、どれほどのクオリティかはさておき、ようやく頭の中の整理もついてきて、それで6月くらいから研究再開というか、読んでは書き、書いては読み・・・という状態になってきた、というところです。


久しぶりの4万字程度のものということで、今のところ少々叙述が冗長になってしまっているのですが、とりあえず書ききってから「縮減」に努めようと思います。


というわけで、今度こそやりきるぞ!!との決意を胸に、取り組んで生きたいと思っています。