読書

ヤン・エルスター(染谷昌義訳)『合理性を圧倒する感情』勁草書房、2008年。
買った時から何度か少し読んでは、あるいは原著をちらっと読んではよくわからず挫折していたけど、このたび読了。めでたい。

合理性を圧倒する感情 (ジャン・ニコ講義セレクション)

合理性を圧倒する感情 (ジャン・ニコ講義セレクション)

う〜む、この淡々とした記述は、エルスターらしいというべきなのか。
しかし、こういうタイプの「政治」哲学・思想系の研究者は、日本にはほとんどいないと思う。何人か出てきてもよいと思うのだけど。
とりあえず、以下の部分をメモ。エルスターにとっては、感情などのstrong feelingは、「合理性」を妨げる可能性があるもの。

反対に、ストロング・フィーリングは、認識をさえぎったり歪ませたりすることで、認識に作用する。認識がさえぎられるのは、単純に、臓腑の感じがあると合理的に思考することが困難になるためである。臓腑の感じは、しばしの時間をとって順序立てて思考を続ける作業を邪魔する。非常に強い感じがあると、選好した行為の他にどんな可能な選択肢があるのか、選択した行為はどんな帰結をもたらすのかを考えることができなくなる。……議論の余地なく明らかなのは、感情や渇望感があると、行為者は他の可能な行為選択肢や自分の行為の帰結を通常に比べるとほとんど考慮しなくなるということである。(234-235頁)

ところで、「臓腑の感じ」って、原語では何だろうか。
原著はこちら。調べりゃいいんですけどね。

Strong Feelings: Emotion, Addiction, and Human Behavior (Jean Nicod Lectures)

Strong Feelings: Emotion, Addiction, and Human Behavior (Jean Nicod Lectures)

その他の本も翻訳が出ないかな。