『政治学』(勁草書房)の刊行について

 気がつくと、なんと今年になって初めての更新のようです。段々ブログを書かなくなってきたという自覚はありましたが、ここまでとは・・・。そして、その間に世の中も「こんな風に」なってしまっているわけですが・・・。
 ということで、少し前になってしまいますが、近藤康史さん、堀江孝司さんとともに書いた『政治学』が、勁草書房の「アカデミックナビ」シリーズの一冊として刊行されました。

政治学 (アカデミックナビ)

政治学 (アカデミックナビ)

 「はじめに」にも書きましたが、最初にお話を頂いたのが2013年の初春でしたから、そこから数えてほぼ7年かけての刊行になりました。長かった・・・。ただ、その分、いろいろと検討し、加筆修正を加え、まとまりのある本になったと思っています。
 本書の特色を挙げるとすれば、1)「政治」自体について考えることにそれなりにこだわったこと、2)政治学にはいろいろな見方があることを提示しようとしたこと、だと思います。
 一点目については、特に第1章「政治の境界」で、「政治とは何か?」あるいは「政治は、何ではないか?」についてそれなりにページを費やして解説しました。第1章は、政治は「経済」ではない(第1節)、「社会」ではない(第2節)、「法」ではない(第3節)という形で展開し、最後に、では政治とはという話(第4節)になります。第2章「政治の場」では、国家(第1節)や国際(第4節)に加えて、「市民社会」や「親密圏」といった節も置くことで、「政治」は様々な場所にあり得る、ということをわかってもらえるようにしました。
 二点目については、本書の第2部「政治学で考える」の全体が、政治学の多様性を伝えるような構成になっています。第2部の各章(第5章~第9章)は、同じテーマを、「記述」「説明」「規範」問い三つの考え方ないしアプローチで取り扱う、という構成になっています。このうちで現在の政治学の主流(と私が思うもの)は、「説明」をより「科学的」に洗練させていくというものだと思います。しかし、この本では、「科学的な説明」の最先端をカバーするという方針ではなく、歴史や類型論などの「記述」、思想的な「規範」も、政治学のやり方なのだということを示すという方針を取りました。
 個人的には、この本を今年度の「政治学原論」の教科書に採用しました。私にとって初めての教科書指定での授業で、どうなることかと思っていたのですが、現在は、「別の意味」でどうなることかという思いがあります。「オンライン」授業のことです。ただし、「オンライン」だからこそ、教科書を出せてよかった、という思いもあります。
 なかなか本を手に取ることも難しくなっていますが、ご関心があれば、ぜひ手に取っていただければと思います。