論文公刊

日本政治学会の学会誌『年報政治学2015-I 政治理論と実証研究の対話』(木鐸社)に、拙稿「観察可能なものと観察不可能なもの――規範・経験の区別の再検討」が掲載されました。本号の特集は「政治理論と実証研究の対話」であり、拙稿は、その一つの方策として、「観察可能なもの」についての研究=実証/経験的研究という想定を再検討しようとしたものです。つまり、本稿は、「経験的研究」の中には、「観察可能なもの」を扱うもの(広い意味での経験的研究の中の「実証主義」に基づくそれ)と、必ずしもそうではなく(実証主義の立場からすれば)「観察不可能なもの」を扱うものとがあり、それぞれと「規範理論」の異なるタイプとが結びつく可能性がある、ということを述べました。もう少し具体的に言うと、「規範理論」の中でも狭義の規範理論(道徳哲学ないし応用論理学としての政治哲学)は実証主義的な経験的研究と協働が可能であり、また、「規範理論」の中で「政治/政治的なるものの政治理論」と把握できるもの*1は、観察不可能なものに焦点を当てるタイプの経験的研究との協働が可能である、ということを述べました。

政治理論と実証研究の対話 (年報政治学)

政治理論と実証研究の対話 (年報政治学)

*1:この名称は、拙稿「政治/政治的なるものの政治理論」井上彰・田村哲樹編『政治理論とは何か』(風行社、2014年)で提示したものです)